ミールスの実践 vol1

こんなものを作りました。実践編その1です。

ミールス実践編はじまります

南インド屋のレシピの大きな欠点として、どれか一つだけを作っても役に立たない、ということが挙げられます。オクラのティーヤルをひとつ作ったところで、ご飯にかけて一食になるわけでなく、酒の肴にもならず、そのまま食べてわかりやすくおいしい訳でもなくて、さらに見た目も地味で、ひとにお裾分けしても喜ばれません。良いところなしです。

ところが、インドの食事として作ってもらえれば、役に立ちます。レシピ本とうよりは、専門書とか、業務用レシピ集とか、そういった趣です。

ただ、それではあんまり近寄り難くなるので、せめて実例を出すことにしました。僕はキングオブポップを目指します!

こんなかんじでミールスに仕立てました。今回のテーマは、「チェンナイにある、すこし現代的で綺麗な店で出てくるミールス」です。念のため繰り返しますが、私は、インドに行ったことは一度もありません。料理教室もやっています。

 

何がなんだかわからないかと思いますので、カレーの名前をつけてみます。

 

解説のようなもの

Sambar

玉ねぎと冬瓜のサンバルです。基本のレシピはこちらです。

いつものサンバルでは、トマトも玉ねぎも使いませんが、このサンバルは、トゥールダルを煮るときにトマトを1/2個くらい手でつぶしていれ、具として、玉ねぎを使っています。玉ねぎは、たまたまイオンで売っていたものが新玉ねぎのようにくせの無い味だったので、鱗片を一枚ずつ剥がして、3cm角くらいに切ったものを、あまり火を通さないように最後に入れています。

また、サンバルパウダーはクミン多めにして、塩とタマリンドを増量し、はっきりとした味にしています。ご飯に合う感じです。チェンナイの現代っ子は、玉ねぎとトマトが入っている方が喜ぶだろう、という根拠のない予想が基になっています。

Rasam

タマリンドの効いた、キリッとしたラッサムです。このレシピ集の⑩酸っぱいラッサムpuli rasamに近いです。

このレシピよりも、もっと素っ気なくてもっと酸っぱい味にしたかったので、トマトと塩を減らし、タマリンドを増やしました。テンパリングもしません。

なんとなく、三歩手前の味、日本人ならもうすこし手を加えたくなるような味にすると、それらしい味になる気がします。そういうイメージで作りました。

Kathirikai puli kootu

茄子のプリクートゥです。本稿が初出で、まだレシピ化していません。

kathirikaiで茄子を指します。クートゥkootuというと、ダルとココナッツのグレイビーに野菜が入っているようなものをイメージすることが多いと思います。kootuは、combinedくらいの意味なので、豆とココナッツに限らず、様々なバターンがありまして、その中でも、タマリンドで酸味をつけたものを、puli kootu と呼ぶことがありまして、これがそれです。茄子と、皮付きひよこ豆を、焦がしココナッツとタマリンド、それから砂糖(ジャグリー)で、よくわからない甘いような酸っぱいような味にしました。

このカレーの何が良いって、見た目が良いのです。茶色くて、ネトっとしていて、小さく切った野菜だけでなくカラチャナか何かも入っていて、テンパリングしたダルが浮いている、冴えない見た目が、実に良いのです。急にインドの風が吹きます。この写真ではカトリによそっていますが、これをバナナリーフの上にひと匙のせると、すごく映える、気がします。

Okra mor kuzhambu

オクラのモールクランブです。ほぼレシピ通りです

きもち水を多くして、長めに火にかけて、しゃばっとさせました。カレーリーフも入れません。いやあ、味のないヨーグルトっておいしいですよね。店で出すものなら、日本食的な味との親和性を考えますが、自分のために作るなら、やりたい放題です。自分でつくるミールスはおいしいです。東京の店で食べられるミールスがしっくりこない方は、自分で作ってみると良いと思います。合言葉はうまみ控えめ、です。

Beans poriyal

インゲンのココナッツ炒めです。レシピはこちらです

レシピよりもインゲンを小さく切り、ヒング、ホールチリを抜いて、玉ねぎとココナッツはごく少量にしました。より直接的に、ただインゲンを炒めた味にしたかったのです。また、ターメリックをすこし入れることで、くすんだ色に仕上げます。インドのミールスって、なぜあんなにくすんだ色なのでしょうか。写真にとるとくすんだ色になるのか、空気がくすんでいるのか、なにやらわかりませんが、ちょっと茶色っぽくするとインドっぽくなる気がします。

冷凍のインゲンは、とても便利です。生のインゲンがもちろん理想ですが、冷凍でも、なるべく小さくて育ちすぎていないものを選べば、ちゃんとおいしいです。冷凍庫に常備しておけば、困った時のインゲンポリヤルになります。

梅のurgai

ピックルやウールガイなどと呼ばれるものです。青梅をかって漬けておいたものです。

レシピはとくに無いのですが、皮ごと適当な大きさに切った梅を塩で揉んで水を出し、大量のチリパウダー、塩、フェネグリークパウダーなどとオイルで漬け込んだものです。白ごま油で作るとおいしいです。適当につくってもちゃんとそれらしい味になります。正しい作り方では、もっとこう、色々と保存性を高めるための方策をとるので、念入りに作りたい方は色々と調べてみてください。

そして、それなりの手間とコストをかけて作ったひとまずの結論としては、Rajの瓶詰のはおいしいんだな、ということです。無理して自作しなくても良い気もします。

 

このように、レシピを基本としつつも、その時に食べたい味に変えていきます。以前のコラムで、いいからレシピ通り作れ、と偉そうに語った気もしますが、まあ、慣れてきたら適当に変えてみてください。

作ってみた感想

・サンバルに玉ねぎとトマトはいらないな、ということを再確認しました。

・つかうスパイスの組み合わせが似通っており、当然、風味が似てきます。それが、なんとなく調和した味を生むのだろうと思うので、やはり、日本的なメリハリを意識しすぎないほうが良いだろうと思います。

・ラッサムを、もっと素っ気ない味にしても良いかな、と思いました。いっそ、ダル抜きでも良かったです。また、やはりラッサムにも、トマトは別に要らないな、と感じました。

・ご飯の茹で方が、若干硬くなりました。浸水させるのを忘れていて、浸水時間が短かくなったためと思われます。気をつけます。すみません。