ガラムマサラ、サンバルパウダー、和風カレー粉、を作ろう、というコラムです。
はじめに
さあさあガラムマサラです。スパイスが好きな日本人なら大体知っていて、もしかすると憧憬とともに語られることもあるガラムマサラですが、インド料理愛好家となると、それとは温度差があるように感じます。インド料理を色々とやってみると、ガラムマサラが数あるミックススパイスのひとつであり、そもそもスパイスはたくさんの種類を混ぜれば良いものではないと気がつき、さらには、インド人は結構市販のものをつかっていることを知るに至ると、ガラムマサラにそこまでの情熱を持たなくなるのだと思います。わかるわかる、ガラムマサラって響きがもうださいよねー。うんうん。
けれど、ガラムマサラ作りは楽しいです。これは事実です。だから作るのです。
そして、サンバルパウダーですが、これは、市販のものは、わけのわからない調合の物もあり、自分で作るのがベストです。インド人から貰った、「これがあればサンバルおいしくつくれるんだよーほんとにおいしいよー」というサンバルパウダーは、たしかにおいしく、調合も妥当ですが、なにせ日本では市販されていません。だから、作りましょう。
最後に和風カレー粉、つまりあの赤い缶のあれです。日本人にカレーというイデアを与えたと思われるあのカレー粉も、割と簡単に作れてしまうので、作ってみましょう。これはおまけのようなものです。
このコラムを読んで実践すれば、「スパイスの調合が難しいんでしょう?」「やっぱりスパイスが難しいから……」「何種類くらいスパイス使っているの?」などの、いわゆる素人まる出し感想の、素人まる出し感がわかるようになると思います。
ミックススパイスの作り方は、
軽く煎って水分を飛ばす→冷ます→ミルなどで挽く
です。
ガラムマサラ編
このような基本配合でいこうと思います。まずはご覧ください。
コリアンダーシード——大さじ2
クミンシード——大さじ1
ブラックペッパー——小さじ2
パプリカパウダー——小さじ1
グリーンカルダモン—–小さじ2
クローブ——小さじ2
シナモン——8cm
ナツメグ——小さじ1/4
ブラウンカルダモン——1個
ローリエ——2枚
ほぼ勢ぞろい、だと思います。メジャーどころをほぼ抑えています。この羅列だけで納得できる方は、この後は読まなくても良いと思います。これから、この配合をかみ砕いていきます。実際の教室では、味や香りをひとつずつ確かめながら進みます。お金とか時間とかやる気とかが無くて参加できない方は、自分でやってみてください。
スパイスを4つの群に分けて解説していきます。これは、個人的な仕分けであり、いろいろとご意見があるかと思いますが、まあ、優しい気持ちで読んでください。
Ⅰ群
コリアンダーシード——大さじ2
クミンシード——大さじ1
パプリカパウダー——小さじ1
ガラムマサラの基礎となる部分です。パプリカパウダーにしてはいますが、チリパウダー、つまり赤唐辛子粉に置き換えても良いです。なぜパプリカパウダーかと言うと、ガラムマサラ自体が辛いと、辛みのコントロールが難しくなるからです。
分量的には、このⅠ群は、適当にばさばさ入れても、味が壊れることはあまりないと思います。そしてこのⅠ群は、どれも廉価です。なので、これらを多めに使うことで、ガラムマサラのかさ増しが可能です。
Ⅱ群
フェンネル——小さじ1
フェヌグリーク——小さじ1/2
このⅡ群は、日本のカレーっぽさを添加します。使わなくても成立するけど、あったほうがカレーらしくはなります。フェンネルを多くすると、スープカレーっぽくなる気がします。薬膳ですねいわゆる。
Ⅲ群
シナモン——8cm
グリーンカルダモン——小さじ2
クローブ——小さじ2
ブラックペッパー——小さじ2
上から三つは、通称、アロマティック三銃士です。これまで挙げたスパイスと一線を画します。有難い香りがします。シナモンは安いですが、カルダモンとクローブは高価です。ブラックペッパーも結構高いです。ここから先は、入れすぎ注意です。このⅢ群以降を多くすると、華やか系のガラムマサラになっていきます。
Ⅳ群
ナツメグ——小さじ1/4
ブラウンカルダモン——1個
ローリエ——2枚
入れなくても良いけど好みによっては加えても良い群です。僕の中で、ぎりぎり加えられるのが上記三種です。スターアニスもちょっとならと思いますが、やめておいた方が良いでしょう。この群に、スターアニス、キャラウェイ、カロンジ、カルパシ、カスリメティ、などなどの、普段はほとんど使わない系スパイスを入れることもできます。ナツメグは、wikipediaによるとガラムマサラの主要成分らしいですが、それを信じて、どばっと加えてしまった場合の責任はだれがとるのでしょう。ナツメグは、非常に癖が強いので、使う際は、少しずつ、少しずつ、です。
以上、簡単な説明でした。ここからは、これらを自分好みに加減する工程です。おおよそ、このような方針で変えていくと良いと思います。どんなガラムマサラにしたいか、によって方針が変わってきます。
ガラムマサラをしょっちゅうつかう人
基本配合から、さらにⅢ群とⅣ群を減らして、より地味系のガラムマサラにしても良いと思います。Ⅳ群はひとつも入れない、という配合もありだと思います。
ガラムマサラはプラスαのかおりづけ、ジャワカレーに足してつかいたい人
基本配合から、Ⅰ群とⅡ群を減らしましょう。なぜなら、市販のガラムマサラやカレールウには、Ⅰ群とⅡ群は十分に入っているからです。スパイスの華やかな香りが好きなのよーという方はとくに、カルダモンとクローブを強くすると良いと思います。Ⅲ群とⅣ群だけで作ったものは、それはガラムマサラよ呼べるかは微妙ですが、「スパイスの香りでいつもの食卓を華やかに!!」系には、非常に役立つと思います。ついでにハーブも足して良いかもしれません。
好きなスパイスがあるor嫌いなスパイスがある
どんどん変えてください。自分の好みにするのが一番です。フェンネル強めのガラムマサラなんて、素敵だと思います。
個性的なガラムマサラにしたい
ブラカルダモンの粉末をガラムマサラと言い張るのがおすすめです。
基本的に、つかう種類が少なければ少ないほど、個性的になりやすいです。絵の具で色々混ぜすぎた灰色の物より、チューブから出した赤をバーン、のほうが、はっきりくっきりするのと同じです。
ガラムマサラ編は以上です。次はサンバルパウダーです。
サンバルパウダー編
サンバうパウダーとは、サンバルにつかうミックスススパイスのことで、サンバルとはsambarのことです。日本語のwikiもあります。
今回は、このような配合でいきます。
コリアンダーシード——大さじ2
クミン——小さじ1
ブラックペッパー——小さじ1
チリパウダー——小さじ1
トゥールダル——小さじ1
フェネグリーク——小さじ1/2
マスタードシード——小さじ1/2
チャナダル——小さじ1/2
ウラドダル——小さじ1/2
ヒング——すこし
ガラムマサラと同じように、三つの群に分けていきます。
Ⅰ群
コリアンダーシード——大さじ2
コリアンダーシードは、サバルパウダーのベースです。コリアンダシードを使わないサンバルパウダーまずないとは思います。え?クミンは?チリは?という疑問もあるかと思いますが、クミン無し、チリ無し、というサンバルパウダーは存在しますし、僕も、けっこうそういう風に作ります。
Ⅱ群
チリパウダー——小さじ1
クミン——小さじ1
ブラックペッパー——小さじ1
トゥールダル——小さじ1
この四つは、サンバルパウダーの定番と言って差し支えないかと思います。これらのどれかが入らないことはあっても、この四つのうち一つも使わないサバルパウダーは、ほぼ存在しないと思います。この4つ、とくにチリとクミンは、好みによって加減して良いと思います。今回は、どちらも少なめです。
Ⅲ群
フェネグリーク——小さじ1/2
マスタードシード——小さじ1/2
チャナダル——小さじ1/2
ウラドダル——小さじ1/2
ヒング——すこし
プラスアルファの風味づけです。無くても良いけど、とくにフェネグリークは、すこしは入れたほうがサンバルらしくなると思います。
ガラムマサラで得た知見を活かして、このサンバルパウダーも色々と加減していきます。お勧め、というか、思いつくアレンジを載せておきます。
現代的サンバルパウダー
チリパウダーとヒングを強くします。チリパウダーは、小さじ1→大さじ2くらいに増やします。ヒングも、小さじ1くらい入れてしまいます。こうすることで、現代っ子が喜びそうな味になってきます。根拠はありません。
なんだかわからないけど苦くて本場風
フェネグリークとマスタードを増やします。フェネグリークは、小さじ1/2→小さじ2くらいまで増やすとよいかんじです。マスタードシードは、小さじ1/2→小さじ1にしましょう。マスタードオイルを使う手もあります。どちらも苦みがあり、ふつう日本人はあまり強くはしないので、そこを敢えて攻めることで、何とも言えない本場感が出てきます。
あっさり系サンバルパウダー
クミンとチリを抜きます。ダルも入れません。あっさり系になります。バランスを取るため、フェネグリークも減らした方が良いと思います。
市販風サンバルパウダー
手元にあるMDHのものは、キャラウェイ、クローブ、ナツメグ、メース、生姜、と、やりたい放題です。食べるとけっこう変な味なのですが、そういえばどこかのお店で食べたことあるな、という味になります。おすすめはしません。
以上がサンバルパウダーでした。では最後に赤い缶のカレー粉です。
和風カレー粉編
これは、アレンジせずそのままでいきます。
ターメリック——大さじ4
コリアンダー——大さじ2
コリアンダーパウダー——小さじ4
クミン——大さじ2
フェネグリーク——小さじ4
ブラックペッパー——大さじ1
チリパウダー——小さじ2
花椒——小さじ1/4
カスリメティ——すこし
ガラムマサラ——小さじ1
このカレー粉の特徴を箇条書きにします。
・ターメリックが多い
・フェネグリークが多い
・陳皮が入る(花椒で代用)
・つかうスパイスの種類が多く漫然とした風味
・粉末にしてからもう一度軽く煎って香りを飛ばす
S&Bの人がどのようにしてこの配合を決めたのかは気になるところです。もちろんこれは私が勝手に作ったレシピで、本物とは違います。本物は、30種類のスパイスとハーブをつかっているらしいので、とてもすごいのです。ここまで読んできた方ならわかるかと思いますが、30種類のスパイスを混ぜたものは、なんだかよくわからない香りの物になるはずです。絵の具を混ぜすぎた色です。イナダシュンスケさんがコラムを書いていますので、「イナダシュンスケ 30種類」などと検索してみてください。
アレンジはしなくても良いのですが、あえてするなら、カスリメティとガラムマサラを抜くと、ちょっとインドっぽいカレー粉になります。
料理教室では、チキンカレーとサンバルをあいがけにして食べます。それにカレーうどんがつくパワーメニューです。
それでは最後に、おいしいカレーうどんのレシピを載せておきます。三人分くらいかな。
・水——1リットル
・厚削りの鰹節——ふたつかみ
・昆布——ひと切れ
・塩——小さじ1
・砂糖——小さじ1/2
・日本酒——大さじ2
・醤油——大さじ3
・カレー粉——大さじ3
・片栗粉——大さじ2.5
・豚肉か鶏肉——適量
・玉ねぎ——適量
・好きな野菜——適量
・うどん——適量
①水に昆布をつけておく。面倒であれば、すぐに火にかけて沸かしてします。沸騰したら鰹節を入れ、弱火で10分ほど煮たてて濃いだしをとる。ふつうは昆布を取り出すけどそのままでOK。出しがらを取り出す。
②片栗粉を同量くらいの水で溶いておく。これ大事。
③だし汁にカレー粉と片栗粉以外の材料をすべて入れて煮る。肉に火が通ったらカレー粉を加える。味を見て、すこし濃いめにしておく。強火にして煮立ったところに、水で溶いた片栗粉を流し込み、2分ほどかき混ぜながら煮立てて滑らかにする。
④うどんと合わせて出来上がり
●ポイントは、とにかく濃いだしをとることと、カレー粉を山ほどいれること
●鰹節はぜひ厚削りのものを
●片栗粉も好みによって加減する。もうすこし濃くても良いかも。
●個人的には、肩に近いロースのトンカツ用を細切りにしたものが好き
●好みで刻みネギなどもどうぞ