マスタードシードって、おいしいですよね。
南インド料理と言えばマスタードシードで、大体なんにでも入っています。
ここで言うのは、ブラウンマスタードシードです。イエローの方は、よくわかりません。
ところで、ブラウン、と呼びますが、あんまりブラウンに見えないのは僕が色盲なのでしょうか。それとも、皮をむくとブラウン、とか、花がブラウン、とか、摘んでるおばさんの頭巾がブラウン、とか、そういう話なのでしょうか。
一番多い使い方は、熱した油で弾けさせてから、カレーにジャッとかけるテンパリングです。サンバルにもラッサムにも、パチャディにも入っています。南インド屋レシピでは不使用ですが、ダルにも入れることがあります。
挽いて使うこともあって、一番使用量が多いのは、ピックルですね。大量のスパイスと油と塩で野菜を漬け込んだものです。あ、野菜だけでなく、ノンベジのピックルもあります。
他には、サンバルパウダーなどのミックススパイスに使われることも多いですし、パチャディの中には、挽いたマスタードを多めに入れてマスタード風味にしたものもあります。
このように、だいたいどんな料理に使っても、怒られることはないと思います。
ただ、直接見たわけではありませんが、北海道にあるインド料理店では、チキンビリヤニにもマスタードシードが入っていました。うーん、というかんじです。インド料理に絶対はないし定義も難しいけれど、ビリヤニにマスタードは、意外性があります。
そう、カレーリーフのときのコラムでも似たようなことを書きましたが、マスタードは主張が弱いから、何にでも入れられるような気がします。入れても大して変わらないから、どんどん入れるのですね。
違うパターンもあります。
日本の料理には大体なんでも醤油が入っていて、浦沢直樹のPLUTOでも、だれか女性のキャラクターが日本の空港に降り立って「すこしお醤油の匂いがします」と言っていたような気がします。それくらい醤油はなんにでも使われているけれど、醤油は主張の強い味ですよね。みんなお醤油大好きなんですね。
話は逸れますが、大豆って、オーガニックコットンを好んだり(うさととか)、ヘナが好きだったり、そういうナチュラル業界(店員Aのブログ参照のこと)の人たちに、人気があります。醤油も味噌も豆腐も油揚げも、みんな大豆からできている、日本古来の食文化は日本人の体に一番合っていて、もちろん飛脚も食べていた玄米が素晴らしい、という流れなのですが、きっと大豆は、そういう人たちの心を、ぐっと掴む何かがあるんですね。「ねえ、放射線って、味噌と玄米でマジで防げるの?」と訊くと「うん、そうだよ」となんの躊躇いもなく答えた彼は、元気にしてるかな。
2017年3月現在、体つくりのため一日に三回大豆プロテインを飲んでいます。それで、この間、あるバイキングで鶴の子大豆の寄せ豆腐を食べたところ、まったくおいしく感じませんでした。豆乳を不味くしたようなプロテインをさんざん飲んでいるので、血中大豆濃度が、めいっぱいになっていたのだと思います。僕は、ナチュラル業界に入る資格はないようです。
だから、大豆より、マスタードが好きです。
そう、それで、マスタードはどんな味かと言うと、ちょっと困ってしまいます。
もちろん、味はします。しますけど、油でぱちぱちと弾けさせたときは、味と言うより、香ばしさが先に来ます。そして何より、あの見た目が、いかにも南インドってかんじがするので、味と言うより、雰囲気なのかもしれません。きもち多めにしておくと、それらしくなるんですね。簡単です。
ただ、さすがに僕でも、挽いたマスタードの味はわかります。ぴりっとして、苦みがあります。……合ってますよね?
マスタードオイル、というオイルがありまして、これは強烈にマスタードの味です。当たり前ですが。
これをサンバルなんかに使っても良くて、苦みと香ばしさと辛みとで、一気に汚いインドの食堂の雰囲気がします。まちがいなく埃っぽいです。きっと何するでもなく道にしゃがみ込んだ若い男たちもいます。そういう味がします。ネパール料理でもよく使うみたいです。ああ、モモが食べたい。
まあ、そんな具合にマスタードは挽くと味が出るのですが、粒のままだと、正直言って、そこまで味はしません。飾り、というと怒られれそうですが、まあ、そんなものです。
現地では、いろんな大きさのマスタードは売っているようです。経堂でカレー屋さんをやっている人のインスタで見ました。使い分けもあるようなのですが、よくわかりません。詳しい方がいたら教えてください。
南インド料理に無くてはならないけど、実はなくてもなんとかなる、そんなスパイスです。とても安いので、しこたま買って、どんどん使ってください。入れすぎると、苦くなるので気を付けてください。
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マスタードオイルを入れる場合は、玉ねぎを入れたりトマトを入れたりして、味を濃くした方が良いと思います。このレシピの最後のテンパリングをマスタードオイルにしただけだと、食べにくくて、味がこなれてなくて、現地感が出ます。……あれ?むしろ好都合?
大根の悪口を言うコラムです。ただ、マスタードオイルを入れるなら、大根も悪くないと思います。書評と、このコラムを書いてから、僕の記事にいいね!をしてくれなくなった人がいます。あなたの先生を批判してごめんなさい。ただ、撤回の予定はありません。