実は、一晩寝かせたサンバルはおいしい

ひとばん寝かせたカレーはおいしい、と言います。

好みから言えば、一晩寝かせない方が好きなのですが、まろやかになってコクが出ますよね。具材から何かが溶け出したり、味がなじんだりするかららしいです。GIYF。ああ、そうなんですね。カレーを寝かせる話を検索すると、食中毒、危険、ウェルシュ菌、などという言葉が躍ります。さっき、常温で二晩放置したカレーを食べました。なんだかお腹が痛くなってきた気がします。

この、一晩寝かせる神話は、昭和の香りがする気がします。コツ、と言うのでしょうか。そもそも、コツ、という言葉がすでにふるくさいですね。安田隆の、気のコツのコツ、という本は面白いです。

そう、神話と言えば、カレーにリンゴとはちみつを入れるとおいしいとか、料理は大鍋でつくるとおいしいとか、川で冷やしたスイカはうまいとか、そういう類の話です。もっと良い例があげられそうなのですが、出てきません。くやしい。牛乳を何かに入れるとおいしいとか、そういうのがありそうです。プリンに醤油、も近いです。

サンバルの話です。

これまでさんざん、作り置きはしないとか、濃い味のものは駄目だとか言ってきましたが、本当は味が濃いものも大好きです。二郎以上においしいものは、なかなか見つからないと思っています。あれだけ、旨み、塩、油、が高水準でまとまっているのだから、おいしいに決まっています。

ただ、ミールスに関してはうまみが控えめの方がおいしと思っていて、だからサンバルには、玉ねぎもトマトも入れずにつくっていたのですが、南インド屋初期のころは、どちらも入れていました。具も、大根、人参、蕪、なんてものも入っていました。クミンを効かせるとおいしいのです。

それで、画像のカップに入ったサンバルですが、これは、店で余ったものをそのまま持って帰って冷蔵庫に入れ、朝おきたらそれを電子レンジで温めて、スプーンを突っ込んだものです。電子レンジが壊れて以来買いなおしていないので、いまならできない芸当です。ちなみに、このカップは、大晦日から元旦にかけて、初詣客を見込んでチャイをテイクアウトで売ってお小遣い稼ぎをしようと思ったものの、みごとに誰も店の前を通らず、知り合いがひとり遊びに来てくれただけだった、一年目の年越しの残滓です。

これが、幸せなおいしさです。

さんざん作って、もう見たくもない、と思っても、一晩経てば、新鮮な気持ちで食べられます。朝起きて、すぐにサンバルが食べられる幸せです。そして、味も、スパイスが丸くなって、豆も水を吸いもったりして、たぶん何かのアミノ酸が増えて、やさしい味になっています。

あれ?一晩たった方がおいしい?と、言いたくなる味です。

この一晩経ったサンバルの愛好者は、結構いると思います。このサンバルならやはり、具は大根だと思います。人参もマストです。玉ねぎトマトも、もちろんマストです。この、マストって言葉、出どころは何処なのでしょうね。ファッション雑誌のイメージですが。

スパイスが丸くなって華やかさはないのですが、だからといってテンパリングしてはいけません。そんな手間をかけないで、そのまま、野暮ったい味を楽しむのが良いと思います。

ダールも、一晩経ってもおいしいです。同じく、もったりした味になります。

そしてラッサムはと言うと、これはおいしくないです。ぼけた味になります。というのも、南インド屋のラッサムが、トマトもニンニクも入れないからで、東京のミールス屋さんで見かけるような、トマトペーストを入れたものなら一晩経ったものを、パンと食べたら美味しいかもしれません。

ということで、一晩たったサンバルを楽しみたい方のために、一晩寝かせる用サンバルのレシピも、今度作ろうと思います。期待しないでお待ちください。


わりと関連する記事を紹介します。

寝かせない方がおいしいサンバルのレシピ

南インドのサンバル

玉ねぎトマト不使用です。具も、茄子、オクラ、冬瓜、とうまみが少ないので、

寝かせても今一つです。これは作ってすぐに食べたほうがおいしいレシピです。

一晩寝かせてもおいしいダールのレシピ

ダールのレシピ

こちらは寝かせてもおいしいです。ニンニクのみじん切りをすこし入れたほうが、

寝かせた時にはおいしくなると思います。

作り置きはしない方が良い、という話

南インド屋がどういう考えに基づいていたかを述べています。

濃い味は駄目、作り置きは駄目、と書いてはいますが、あくまでひとつの考えです。

僕は、味の濃いものも大好きです。