大根入りのサンバル、おいしいですよね。サンバルには大根、というイメージを持っている方は、結構いるかと思いますし、実際、日本のインド料理店で、サンバルに大根が入っている店は多いです。アーンドラ系列、ダバインディア系列、たしかマドラスミールスも入っていますね。札幌のjhadpulも入っています。コラムの方でまじめに書くなら、全店舗のサンバルを調べるところなのですが、ここではそれはしません。勘弁してください。それと、渡辺玲さんのレシピでも大根が入っています。ということは、アジャンタでも入っているのかもしれません。
南インド屋では、サンバルに大根は入れません。冬瓜を入れます。冬瓜は殆ど水で出来ていて、ほろ苦いような香りがします。100倍くらいに濃縮したら、大根になるかもしれません。
大根を使わない理由としては、店員Aが大根を入れると嫌な顔をする、というのはあります。たくあんが嫌いで、いわゆる大根くさいのが嫌いみたいなのですが、ムラコアチャールという大根のネパール風漬物みたいなものをつくったときは、ばくばく食べていました。やはり、二人しかいない店員の片方が嫌いなものは作りにくいですし、実際、まかないをおいしく食べられないとなると、士気に関わります。兵站は大切なんですね。
まじめな理由としては、大根が、味が濃いからです。匂いも強いです。それに合うようなサンバルを作ろうとすると、玉ねぎとトマト、もしかしたらニンニク生姜も入れたくなるかもしれません。クミンも多めが合う気がします。塩も強めになります。
ある店のサンバルは、大根、人参、いんげん、南瓜、と具だくさんだったのですが、砂糖をいれてるのかな、というくらいに甘かったです。甘みが舌に届くのが早かったので、確証はないですが、実際に砂糖が入っていたのだと思います。甘みを強くすることでバランスをとるつもりだったのかもしれませんが、そのサンバルは、とてもバランスが良いとは言えない出来だったような気もします。
では、なんで大根を入れたサンバルが多いかというと、安くて手に入りやすいからだと思います。
大根は、安いです。もしかしたら、グラム当たりでは一番安い野菜かもしれません。大きい大根を300円くらいで買って、それに大きめの人参3本を150円で買えば、100人分くらいは作れるような気がします。一人ああたま4.5円ですね。これはもう、使うっきゃないです。
また、大根は、人参と一緒になって、年がら年中スーパーで売っていて、他の野菜より季節によるばらつきが少ないのも魅力です。
お店をやっていると、冬になって野菜がおいしくなくなるのは、死活問題です。おすすめ品のコーナーに置いてあるのは、白菜とネギ、よくてもほうれん草くらいです。それすらないときは、98円のシメジが山と積まれているのです。もう、あきらめて鍋にしようよ、と思ったことは、何度もあります。本当なら冬になれば、白菜を煮たり、甘くなってきた芋をふかしたり、小松菜のお浸しにしたり、常夜鍋を食べたりしていればよいのですが、ミールス屋さんはそういう訳にはいきません。
その点、ネパールのダルバートなら、芋と人参と大根に青菜、あとは豆があればそれで十分なので、冬になっても味が落ちないのです。だから、だれか札幌でダルバートやさんをはじめてくださいお願いします。
そういうことで、南インド屋ではサンバルに大根を入れません。
と言いたいところですが、実は、初めの頃は大根と人参を入れていて、原価の低さにホクホクしていました。上に書いたのは、なんということはない、自分のことだったのですね。冬瓜と茄子、それにオクラを入れるようになって、原価がはね上がりましたが、背に腹は代えられぬ、というやつです。南インド屋も初めのころはもうすこし味の濃いミールスだったので、そこまで違和感もなかったのです。
サンバルは、色々な野菜で作ることができますが、どうしても大根を入れたい!というときには、玉ねぎトマトを多めにすると、味がきまりやすいです。お試しください。