築地市場移転問題にかかる、石原慎太郎の会見を見て思ったこと

世の中は、築地市場の移転でたいそう揉めていたようですね。普段はテレビも新聞も見ずにいる南インド屋店員両名が、石原慎太郎の記者会見のネット配信を見たので、そのことを書こうと思います。

石原慎太郎、大丈夫?

石原慎太郎は、当たったんですね。(注.当たる、とは脳梗塞になったことをさす。用例:ああ、佐藤のおばさん当たったんだね。びっこ引いて歩いてる)

ありゃあ、見てられないな、と思った方は多いと思います。

石原慎太郎と言えば、昭和の男の特区にいる人間だと思います。横暴さ、傲慢さ、ずうずうしさ、そういうものが、糾弾されるどころか、都知事にまでなってしまった人で、なぜか何をやっても許される、特殊な立ち位置の男です。長嶋さんが何をやっても許されるのとは、全然違います。

きっと頭の良い人で、才能にも恵まれて、自分にたっぷり自信をもっている石原慎太郎が、あの記者会見です。

いっそ、ゆうたろうを呼べばよかったのではないかと思います。なごみます。

内容は全然わかりませんが、記者たちに「どう落とし前つけんのや」と迫られても、ふつうの政治家らしい受け答え、つまり、政治家学校の一学期で習う「ただしい牛歩戦術の歩幅」、「正しいやじの飛ばしかた」と並ぶ重要科目、「結局なにも答えないはぐらかし方」を活用するだけでした。「恥さらし」という言葉を使った、挑発的な質問にも、「失礼だぞおまえ!」と恫喝するわけでもないのです。かつての石原慎太郎の姿はありません。

ただ、往年のきらめきが戻る瞬間もありました。それは、現小池知事(小池って人が知事なんですね)の責任を追及する場面です。

記者が、ではないですよ。石原慎太郎が、小池知事の責任追及をするのです。それも、結構しつこく言うのです。

最初の石原慎太郎からの意見陳述で、行政の責任から、現知事が悪い、という話に展開します。いや、それはそれで正論なのかもしれませんが、それをここで言うか、というかんじです。

急に目を輝かせ、ふてぶてしい顔で「半値で海外に売るなんてけしからん。行政の責任を現知事は負うべき」というようなことを言うのです。告発するべき、とまで言います。さすが石原慎太郎、自家撞着はまったく気にしない、その姿勢が素敵です。

あ、あとは、「最高権威」「公認会計士」「専門家」「パリ」「産業技術総合研究所」と言う時には、非常に明瞭に発音しています。

昔、お盆の時、舌ガンを患った住職が、ほとんど聞き取れない話を一時間以上していたのを思い出しました。

「もごもご、ふにゃふにゃ、一軒百万、一軒百万、ふにゃふにゃ」

新しいお堂を建ててお金がかかった時期だったんですね。住職はお金好き、石原慎太郎は、権威好きなのですね。

記者たちとの質疑応答

記者会見での質問って、瞬発力がいりますよね。事前に下調べするのはもちろんですが、特に今回のような、どう転ぶかわからないような会見では、会見の中身と、それまでの応答を踏まえて、ぐさっと一言で突き刺すような、質問をしないといけません。

まずは、司会のおじさんの開会の辞からして、あー、えー、と間延びしています。もしかして石原慎太郎の友達?

そして、質問がいちいち長いので、たぶん石原慎太郎は、このスピードでは完全には理解できない可能性があります。

午後スマのオクダイラさんの質問は、布石の質問でしたね。石原慎太郎が、どこまで「俺は知らないわからない」で通すつもりかを試していたのだと思います。残念ながら、後の人が続かなかったので無駄になりました。「築地で働いている人にひとこと」なんて訊かなくてよいでしょう。

大江アナも、いまひとつでした。弟が、大江アナをひいきにしていたので残念です。

テレビ朝日のタケウチさん、何が訊きたかったのかよくわかりません。「どれくらい移転問題って重要だったの?」なんて、答えようがありません。

イケガミさんは、司会のおじさんに話をとられてしまいました。

ほとんど埒のあかない問答の中、司会のおじさんの意を汲んで、TBSのコマダさんという記者が、鋭いことを言っていたと思います。ミスの連続だったのだから責任がありますよね、ハンコを押す人間の責任ってありますよね、と詰め寄りました。はっきりと、追い詰めにかかっていますね。ジンボウさんが、ハンコを押す人間の責任を、繰り返します。

そのあとのフジテレビのカワナギ(?)さんが、石原慎太郎のはぐらかしに負けずに、続けてそこを詰めれば「俺に責任があった」と言わせられたのかもしれませんね。カワナギさんも、面白そうなことを言っているのですが。

そしてテレビ朝日のヒラノさん、しゃべり方が若者っぽいですね。ユズリハさん、いまひとつ頭が切れないのですね。寝不足ですか。共同通信社のカキザキさん、端的に訊く、というから期待したら「費用膨らんだことどう思う?」という質問です。最後のクラシゲさん、喋り方が昔の記者っぽいですね。良いですね。

そして結局、司会のおじさんが諭すように言います。説明しようにも、よくわからないし、調べてもいないんだよね石原くん、説明責任はあるんだから、次の機会に説明してね、とまとめておわります。

実際、石原慎太郎ひとりの問題かどうかは、僕は知りません。たぶん、まあ、いろいろあったんですよね。

石原慎太郎が繰り返し言っていたのは「専門家がOKと言って議会もみんなで決めたんだから、ハンコついただけの俺に責任はないよ」ということです。この一本槍でこの会見に臨む、これはなかなか真似のできないことです。

最後の拍手はいらない気もしますが、なかなか味のある会見でした。


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