トマト缶っておいしいですよね。何処でも売っていて、ひと缶100円しなくて、便利に使えます。南インド屋でも、チキンカレーだとか、味の濃いものを作るときは、トマト缶をつかっていました。なんとなく、カットされたものより、ホールの方が美味しいような気がします。気のせいかもしれませんが。
もちろんイタリアンにも使うし、日本カレーを作るときにも使えるしで、だいたい台所のどこかにひとつくらい転がっているイメージです。そういうイメージで育ったせいか、整理整頓ができない性格のせいなのか、いざ使おうとすると、「あ、トマト缶がない!」と2,3週間に一回くらいは言っている気がします。毎度まいど、「あれー、トマト缶くらいあった気がするけどなー」と言いながら探すも、無いものはないのですね。あ、あった、と思ったらエンドウ豆の水煮缶だったりすると、がっかりです。
よく考えたら、眼鏡をかけていたころも、一日に3回くらいは、「眼鏡がない!」と騒いでいたし、はじめて女の人を家に招待した時も、「あ、鍵がない」となって、一緒に探してもらいました。たしか、結局カバンの中にちゃんと入っていたのですが。
本題は、インド料理でどれくらいトマト缶を使えるか、ということです。
積極的に使って良いと思います。
そもそも南インド屋のレシピでは、玉ねぎトマト、ニンニク生姜の出番が少ないのですが、そうでないレシピ本をめくって、トマトが出てきた時は、とくに冬場なら、トマト缶を使ってしまってよいと思います。風味はもちろん違うのですが、まあ、目くじら立てるほどではありません。
たとえば、サンバルやラッサムにも、トマト缶がつかえます。南インド屋のレシピではそもそもトマトを使わないので、トマト缶の出番もありませんが、他のトマトを使う多数派のレシピでは、トマト缶を使っても大丈夫だと思います。むしろ、その方がおいしくできるし、味は安定するし、安いしで、良いかもしれません。日本のインド料理店では、サンバルには、十中八九トマト缶が使われていると思います。おいしくて安いのだから、使わない手はありません。
ただ、ラッサムにトマト缶をたくさん入れてしまうと、本当にトマト缶味になってしまうので、トマトジュースを使うのもおすすめです。もしかしたら飲食店ではこっちかもしれません。やはり加熱用のトマトと生食用のトマトでは、味が違うのですね。
もちろん、チキンカレーやマトンカレー等の肉のカレーでも、トマト缶を使えます。トマト缶をミキサーにかけてピューレ状にすると、ぐっとプロの味になります。砂糖と塩と油を多めにすることも忘れずに。
アルゴビ(カリフラワーとじゃが芋のカレー)などの、最初に玉ねぎとトマト、それにニンニク生姜を加えてマサラを作るようなカレーでも、トマト缶が好適です。むしろ、生のトマトだと水っぽくて仕上がりが悪くなる気もします。あ、アルゴビとはいっても、色々な種類があります。念のため。あとは、ネパールのタルカリでも、やっぱり生のトマトより缶の方が作りやすい気もします。
トマト缶で代替できない料理は何があるかな、と考えると、サラダっぽいものはやはり、生のトマトを使った方が良いですね。
ひよこ豆のサラダchana chaatは、これは絶対に生のトマトですし、ヨーグルトサラダのライタも、トマト缶ではだめです。玉ねぎとトマトのアチャールも、生が欲しいですし、トマトのパチャディなど、トマトを具にする時も生が必須です。あとは加熱するものでも、オムレツに入れるのは、生のトマトの方がおいしいです。トマトの青臭いかんじを出したいのです。
と、こういうかんじで、生のトマトをトマト缶で代用すれば、作ってみるハードルは、すこし下がるかもしれません。別のまじめな方のコラムで、いいからレシピ通りに作ってください、ということを書いた気もしますが、それはそれとして、あるもので作って、あらおいしいね、というほうが、楽しい気もします。
あと、これは検証実験はしていないので何とも言えませんが、生のトマトを一度使って、残りをラップで包んで保存するときは、切り方で日もちが違う気がします。輪切りにをするようにして切った方が、持つ気がします。もしかすると、縦に切るよりも輪切りの方が、切断面に綺麗にラップを貼れるので、それで日持ちするのかもしれません。
あ、輪切りにしたぺらっとしたトマトを保存するのでなく、トマトをまな板において、しっぽの方(?)から少しずつ輪切りにして使っていって、残ったへたの付いたほうを保管するときの話ですよ。わかりにくくてすみません。
それと最後に付け足すと、トマト缶も銘柄によって、かなり味が違います。いやあ、酸っぱいなあ、というのもありますし、味気ないのもあります。たしか紺色っぽいのは、酸っぱかった気がします。
これはトマト缶に限ったことではありませんが、料理が失敗する原因の多くは、材料の揃え方だと思います。酸っぱいトマト缶を使えば、だれが作ったって酸っぱくなってしまうのです。プロの方はおそらく、それを嫌って、できるだけ同じ銘柄のものを使い続けるはずです。プロでないにしても、スーパーで安いものを買ってきて、もし酸っぱくなったら、油と塩と砂糖を足せばなんとかなります。おためしください。