2018年4月15日の『ピーナッツ・カシューナッツ・ゴマ・ポピーシード・ココナッツ 5つのコクだし材料により変化するベジコルマを楽しむ会』の大体の内容です。今回は台本ではありません。ご査収ください。マニアック料理教室についてはこちらをご覧ください。
ベジコルマとは
ベジコルマ、とは、Veg korma のことです。Kormaとは、濃厚なカレーを指す言葉です。とくに、ナッツ類やココナッツなどで、濃厚なグレイビーを作ります。チキンコルマ、と言えば、チキンの濃厚なカレーですし、ビーフコルマ、と言えば、牛肉の濃厚なカレーです。Vegはもちろん野菜です。つまり、ベジコルマとは、濃厚な野菜カレーです。
では、何をもって濃厚とするか、ですが、明確な線引きは難しいです。どこまでがchicken curryで、どこからがchicken kormaなのか、結局は作る人の主観によるのですが、まあ、とろみが付いていて、ナッツやココナッツのペーストが入っていれば、大体はコルマと考えてよいと思います。間違いにはなりません。
表記についてですが、Kurmaというと南インドっぽいらしいです。クルマです。ただ、正確な記述は見つからないので、らしい、程度にとどめておきます。コルマは、kormaと書く場合と、qormaと書く場合があります。使い分けについては良く分かりません。インド好きの方に訊いてみてください。
何がコルマをコルマにするか
カシューナッツ、ポピーシード、ピーナッツ、胡麻、ココナッツ、の5つを今回は使います。補助としてヨーグルトも使いますが、これは酸味づけの意味合いもあるので除外します。ほかには、アーモンド、生クリームも、使えると思います。これらはすべて、脂肪分を多く含んでいますので、ペーストにすると、濃厚な味になります。当たり前ですね。これらのコクだし材料を、複数組み合わせてつかうことが多いです。うまみの相乗効果ではありませんが、複数を組み合わせることで、「なんだか良く分からないけど濃厚だ!」という味になります。
そこで今回は、これらのコクだし材料を一種類だけ使ったベジコルマを5種類作り、どれがどのような味かを確認します。そのうえで、応用編として複数を組み合わせたベジコルマを作って食べます。そうやって、ベジコルマを探求していきましょう。「あれとあれが合わさって濃厚だ!」という風になるはずです。
ベジコルマの作り方
作り方は色々ですが、ニンニク、玉ねぎ、生姜、トマトなどを使うことが多く、また、スパイスも、比較的華やかにすることが多いです。華やかとはつまり、ガラムマサラだったり、カルダモン、クローブ、シナモン、あたりを使うことが多いということです。ただ、これは例外もたくさんあるので、あまり深く考えないでください。
今回は、まず、普通の野菜カレーをベースとして作り、それに、コクだし材料を加えることで、5種類のベジコルマを作ります。
油をたっぷりと熱し、カルダモン、クローブ、シナモンをひとつまみずつ入れて、玉ねぎを炒めます。透き通るくらいになったらニンニク、生姜を加え、さっと炒めます。ターメリック、チリパウダー、コリアンダーパウダーを加えて油となじませてから、野菜を入れます。さらにヨーグルトと水を加えて火を通します。蓋をして10分くらいです。これで、ふつうの野菜カレーが出来上がります。安心して食べられるよう、たっぷりと作ります。このあと、ナッツ類を足してもうひと煮込みするので、すこしじゃが芋が硬いかな、くらいにしておきます。
●人参——2本
●じゃがいも——8個
●いんげん——ふたつかみ
●グリーンピース——1cup
●玉ねぎ1個——みじん切り
●ターメリック——小さじ1/2
●チリパウダー——小さじ5
●コリアンダーパウダー——小さじ2
●ガラムマサラ——小さじ2
●塩——大さじ2
●ヨーグルト——1cup
●水——800ml
●サラダ油——1.5cup
チキンプラオの作り方
基本的には、すでにレシピを公開してありますので、大体はそれに則ります。
●チキンレッグ3本
(関節のところで切り分けて一本を半分にする。計6切れになる)
●水——1500ml
●塩——大さじ1
●にんにく——3かけ(皮つきのまま)
●生姜うすぎり——4枚
●ブラウンカルダモン——5粒
●シナモン——6cm
●ブラックペッパー——小さじ1
●コリアンダーシード——小さじ1
●ベイリーフ——3枚
●クローブ——小さじ1
●青唐辛子——3本
——ここまでを鍋に入れて20分ほど煮る——
漉してスープを1500ml量っておく。チキンは具にするのでとっておきます。つぎに炊き込みます。
●サラダ油——大さじ2くらい
●にんにくと生姜をつぶしたもの——大さじ1くらい
●フライドオニオン——1/2cup
●バスマティライス——4cup
(40分間水に浸けて、20分間ザルにあげて水を切っておく)
●ケウラウォーター——小さじ2くらい
大鍋にサラダ油を熱し、にんにくと生姜をつぶしたものをさっと炒めます。香りが出る程度です。そこに、量っておいたスープ、バスマティライス、フライドオニオン、ケウラウォーターを入れて、強火で炊きます。
どんどん水分が減ってくるので、液面が米より下がって、今回は硬めに仕上げたいので、もうすこし水が減ったところで蓋をして弱火にします。15分ほどしたら火を消して蒸らします。炊飯器でも出来ると思います。
プラオは炊き立てより、時間がたった方がおいしいので、早めに炊いてしまった方が良いです。なので、今回は、スープを作るとことまでは事前にやってしまいます。メインはあくまでベジコルマなのです。
いざ5種類のベジコルマを検討する
まずは、それぞれの材料を、水とともにミキサーに入れ、ペーストを作ります。はい、3分クッキング状態で、すぐに出てきます。5種類がそろいました。
これがカシューナッツ。
これがピーナッツ。
これがココナッツミルク。缶から出しただけです。AROY-Dです。
何の面白みもない絵面ですね。次に胡麻です。
最後にポピーシードです。芥子の実です。
すべて白いですね。脂肪分って白いのでしょうか。
先ほど作った野菜カレーを小鍋に入れ、ひとつひとつ作っていきます。写真をご覧になればわかるかと思いますが、じゃが芋の切り方が大きくて和風になっています。気の迷いです。本番では、もっと小さく切ります。
カシューナッツで作ったコルマ
ペーストを作ります。できたペーストを、適量野菜カレーに加えて煮立たせます。
●カシューナッツ——1/2cup
●水——1cup
カシューナッツは、ミキサーにかける前にぬるま湯に浸けておきます。そうすることで滑らかになりやすくなすのです。見た目はとてもベジコルマっぽいですね。口当たりはそこまでしつこくありませんが、胃に入るとどっしりきます。くせはあまりありません。少し甘みもあるし、いかにもベジコルマ、という味になります。ちなみに、カシューナッツは安いナッツですので、世のインド料理屋では、大量に使われています。どうせペーストにするので、砕けてしまった安いものを仕入れていると思います。
ピーナッツで作ったベジコルマ
●ピーナッツ——1/2cup
●水——1cup
ピーナッツは、すこし粗さを残すように挽きます。何故って、ピーナッツはそうすることが多いのです。皮付きのままペーストにするので、茶色のつぶつぶが残ります。とてもざっくりいうと、北インドではカシューナッツを使うところを、南インドではピーナッツ、という印象です。とてもざっくりですが。
見た目はカシューナッツのベジコルマとほぼ同じです。カシューナッツよりも、香ばしいです。風味があります。ちょっと緑っぽいというか、青臭い味がします。バタピーとは全然違う味です。なんとなく、エキゾチックな味とも言えるかもしれません、そして、けっこうくどいです。粗さを残してこれなので、滑らかなペーストにしたら、もっとくどくなります。さすがピーナッツですね。粗さが残る分、見た目がもろもろっとなり、それがなんとなく本場っぽくなります。
ココナッツミルクで作ったベジコルマ
当たり前ですがココナッツの甘みが強いです。ナッツと比べても甘みは強いです。脂肪分も多いのか、かなりしつこい味ですが、なんとなく南国っぽい味になり、それが誤魔化されています。ココナッツシュレッドをペーストにする手もありますが、それよりもココナッツミルクの方が味が均一になり、舌触りも柔らかくなるので、よりコルマらしい出来になります。
ポピーシードで作ったベジコルマ
●ポピーシード——1/2cup
●水——1cup
ポピーシード、けしの実です。粘度は低くはないのですが、ペースト状ではないので、食感が独特です。というのも、ポピーシードは非常に粒が小さいため、なかなかペースト状にならないのです。そして、あまりくどくはありません。そもそも脂肪分が少ないのかもしれません。何より風味が特徴的で、埃っぽい味というかなんというか。個人的には好きですが、好き嫌いが別れそうです。渡辺玲さんは、好きだそうです。
ポピーシードは、ピーナッツと並んで、ハイデラバードぽいかな、という気もします。いわゆる北インドの味、というかんじではありません。
写真を撮り忘れました!すみません!イマジン!
胡麻で作ったベジコルマ
●胡麻——1/2cup
●水——1.5cup
色は、あまり白くありません。茶色っぽいです。さらっとしています。粘度は低めです。胡麻は和風のイメージがあるので、和風っぽいコルマになるかと思いきやさにあらず。さらっとしつつもコクがあります。胡麻の風味とスパイスが良く合います。甘い香りがするのも、コルマらしくて良いです。カシューナッツよりもつかいやすいと思います。しかも安いので、チキンカレーのコク出しに使うと、ビュッフェ形式の店のオーナーが喜ぶかもしれません。店員Aはこれが一番好きと言います。僕もそうかもしれません。
画像だけ比べても、まったくわからないことと思います。食べてみると、思ったほどの際立った個性はありません。もちろん違う味なのですが、二重盲試験をやったらどうなるかはわかりません。ただ、これはマニアック料理教室です。これくらいの違いがあれば、何の問題もありません。カルビーと湖池屋よりはずっと違います。
ミックスさせてベジコルマを二つ作る
これで、それぞれの味が把握できたことと思います。それではここからは、コクだし材料を複数つかった、二種類のベジコルマを作っていきます。応用編です。ひとつは、クリーミーで、ナンやチャパティにつけて食べたくなるもの。もう一つは、スパイシーで、米にかけて食べたくなるもの、です。
クリーミー系ベジコルマはカシューナッツ、ココナッツ、ごまで作る
とろっとしたベジコルマが出来上がります。甘みも強いです。塩はうすめにします。
サラダ油少しを熱してターメリックとガラムマサラを少し入れ香りが出たら、野菜カレーを入れます。ペーストを加えて煮立たせます。最後に、カルダモン、シナモン、クローブをテンパリングし、さらに甘い香りを添加します。色がうまく出ていませんが、実際はもっと黄色いです。
●サラダ油——大さじ1
●ターメリック——小さじ1/2
●ガラムマサラ——小さじ1/2
●水——1cup
●カシューナッツペースト——1cup弱
●ココナッツミルク——1/2cup
●胡麻ペースト——1/2cup
●テンパリング用
○サラダ油——小さじ2
○カルダモン——6粒
○クローブ——8粒
○シナモン——6cmくらい
スパイシー系ベジコルマは、ピーナッツとポピーシード
あまりとろみは強くなく、さらっとした出来上がりになります。甘みも控えめです。鍋にたっぷりのサラダ油を熱して、チリパウダー、ターメリック、ガラムマサラを加えて香りを出します。そこに野菜カレーを入れて、さらにレモン汁も足しましょう。きりっと塩を効かせます。
●サラダ油——???
●ターメリック——小さじ1/2
●チリパウダー——小さじ2
●水——150ml
●ピーナッツペースト——1/2cup
●ポピーシードペースト——1/2cup
●レモン汁——大さじ2
●塩——小さじ1
他にはこのような組み合わせも考えられます
時間の関係で今回は二つですが、ほかにも組み合わせは考えられます。
ピーナッツ・ポピーシード・ゴマでバガラベインガン
今回は胡麻をクリーミー系に置きましたが、これをスパイシー系に移動させて、タマリンドを効かせると、バガラベインガン、というハイデラバード名物の茄子のカレーのグレイビーに近くなります。ココナッツを入れることもあります。このカレーは、ビリヤニに添えられることが多いそうです。やはり、ご飯に合わせる場合には、くどさ一辺倒でなく、酸味を加えたくなりますね。レシピもあります。
カシューナッツとココナッツで白いベジクルマ
ヨーグルト、ターメリック、チリパウダーを抜いて作ります。野菜も、炒め煮にするのでなく、下茹でしたものをグレイビーに入れる作り方です。とにかく白くなります。フェンネルと青唐辛子をきっちりと訊かせることで、なんとか味のバランスを取ります。白いご飯にかけて食べておいしいかはちょっと疑問なのですが、このような白くて甘いベジクルマも存在します。そう、こういう場合は、ベジクルマと呼びたいです。これもレシピがあります。
カシューナッツとココナッツミルクでイギリス人も好きそうなベジコルマ
上記のクリーミー系の別バージョンです。カシューナッツをベースに、ココナッツミルクを使い、ごまを抜くことで、よりわかりやすい味になります。それほど辛くしない方が良いかと思います。薄黄色になるように仕上げましょう。なんとなく、ニルワナムのベジコルマはこんなかんじかな、という気もします。
ココナッツミルク一辺倒で、ケララシチュー
ターメリックとチリパウダーを抜き、青唐辛子とブラックペッパーを効かせます。カルダモン、シナモン、クローブ、を前面に出して、カレーリーフを香らせます。そして、ココナッツミルクをたっぷり使って、シチューにします。これでケララシチューです。個人的には、あまり好きではありません。
それでは最後に、チキンプラオとふたつのベジコルマを並べて食べましょう。