札幌の冬は、10月から4月までが寒いです。一年の半分です。ええ、春と秋は、目をつぶっている間に駆け抜けていきます。
そんな札幌に住んでいます。南インド屋、と名付けておきながら、札幌の冬には、ネパールの豆カレーがおいしいと思います。ダルです。
豆は何でもよいけれど、ムングダルでもひよこ豆でも、マスルダルでも何かよくわからない豆でも、何でも良いのだけど、個人的には、皮付きのウラドダルが好きです。あの、ワダとかドーサとかにも使う豆の、皮付きバージョンです。
ウラドダルを圧力なべで10分くらい煮て、それに炒めたニンニクと、黒くなるまで油で焦がしたジンブーを入れて、塩はちょっときつめにつける。ご飯にかけるからね。ジンブーというのは、ネパールの枯草みたいな藁みたいなハーブで、ニンニクとかニラとか、そういうにおいがします。
見た目は、灰色のような黒のような、絵具を全部混ぜたみたいな色で、それに黒こげの枯草が浮いているのだけど、これがすごくおいしい。しみじみおいしいのです。粘度は、スープみたくしゃばしゃばにするのが好きです。
もちろん南インドの食べ物も好きなのだけど、きっと日本人の味覚に合うのは、ネパールの方だと思う。そう、このダルとご飯(バート)を合わせて、ダルバートと言うようです。定食、くらいの使われ方をするみたいですがよくわかりません。それに、青菜を炒めたやつと、大根のスパイス漬物を合わせて、もうこれで十分。
ネパールは、なんというか山がちで斜面が多くて、その斜面にはヤギがいて、そのヤギをマトンと言ってご馳走として食べている、そういう貧しい国というイメージです。行ったことはありません、すみません。
そういう環境の食べ物だから、南インドの、バナナがそこらに生えていて、牛がのたのた歩いていて、夜はマンゴーの木の下で眠れば、それでべつに生きていけるような、楽天的な味とは違うのです。しっかりと、舌に染み込むような味です。
もうちょっと詳しく違いを言うと、ネパールのダルバートは、豆とかじゃが芋とかインゲンとかの、味のしっかりしたうまみ、そこに塩味を重ねて、スパイスを振りかけたような味です。米はわりとぱさぱさ。うまみも塩味も、しっかりついている。
南インドのミールスは、米はもっと味が無くて、豆も冬瓜もヘビウリもさらっとしていて、塩をぱらっとかけて、そこにココナッツでうまみを足して、タマリンドで中和して、そしてスパイスを振りかけた味。うまみも塩味も、足りないような味。でもおいしい。強い日差しがあったら、もっとおいしい。
あ、全然詳しく説明できていませんね。でも、これでわかってください。
ミールスは大好きだけど、煮しめうまい、唐揚げうまい、という脳の使い方で食べると、あれ?となるようなおいしさです。なにかスイッチを切り替えないといけないようなおいしさです。正直に言うと、一歩間違えると気持ち悪い味です。ク-トゥカリなんかは、とくに気持ち悪い味です。大好きですが。
見た目は似ているから、隣接領域と思われがちなミールスとダルバートだけど、ミールスを作るような気持ちでダルバートをつくるとおいしくないし、逆は田舎くさい味になります。
そういうことで、毎日のように豆を煮て、食べています。はやく暖かくなって、おいしくミールスを食べたいです。そのうちネパールのものもレシピ化するかもしれません。期待しないで待ってください。