プロの料理人が食生活で気をつけている3つのこと

つい30年前くらいのサッカー選手は、試合前にピザを食べたりチキンを食べたり、終わってからも炭酸飲料を飲んだりと、やりたい放題だったそうです。

アーセナルの監督になったムッシュ・ベンゲルはそれを改めた云々。最近のサッカーの世界は、まず走れなければ話にならない、という認識になっているそうで、そのためにも、栄養摂取をふくめた体調管理が厳しくなってきているみたいです。二日酔いでは、そりゃあ走れませんよね。

そこで、飲食業界の話です。

プロの料理人たちが食生活において、たぶん気を付けているであろう3つのことを挙げてみます。

①味の濃いものに気をつけるようになる

料理人たるもの、常に舌を良い状態に保つべき。とまでは言いませんが、きっと皆さま、サッカー選手よろしく、舌の管理には気を遣っているかと思います。

とくに、味の濃いもので舌が鈍くなることには、気を遣っているはずです。

僕の場合は、珈琲がだめでした。

一度、仕込み前に濃い珈琲を飲んだら舌が鈍くなって、塩味をうまく決められなくなったことがありました。あれ、この塩、いくら入れてもしょっぱくならない、変だな、と思ったら、自分の舌が変だったんですね。カリフラワーのポリヤルは作り直しになりました。

それ以降、濃い珈琲は飲まなくなりました。休みの日には飲むこともありましたが、飲みつけていないと、たまに飲んだ時に「こんなに苦かったっけ!?」と驚きます。もともと、珈琲を飲むと利尿作用がばつぐんに効いて、トイレと友達になるので、あまり飲まない方だったのですが、厨房に立つようになって、ますます飲まなくなりました。

僕の場合はとくに珈琲でしたが、花椒たっぷりの麻婆豆腐なんかの、味の濃い料理も危険ですね。

他には、アルコールも、影響がある気がします。飲み会のあとに家系のラーメンを食べるのが好きだったのですが、ああ、味蕾がバカになってるなあ、という快感がありました。煙草も、舌に良くはなさそうですね。

ところが、珈琲も飲まない、酒も飲まない、煙草も吸わない、というのが理想かと言うと、そんなことはないと思います。だって、そんなことをすると、お客様の舌と乖離してしまうからです。精進料理ばかりをつくるなら、それでも良いと思いますが。

なので、正しくは、味の濃いものを食べないようになる、と言うよりも、その料理に合った濃度のものを食べるようになる、かもしれません。

ただ、感覚器は刺激に慣れるものなので、ときどき薄味のものを食べて、舌をリセットする人は、この業界には結構いるだろうと思います。

②お腹いっぱい食べず、空腹に耐えるようになる

お腹いっぱいでは料理が出来ないと、包丁無宿でも言っていた気がします。

たしか、主人公は監禁され空腹の状態で料理勝負をするのですが、かえって空腹の方が味が決めやすくなり、逆に敵は、勝利を確信して前祝いでたらふく食べたため、おなかが重くて料理ができない、という展開だった気がします。

包丁無宿に書いてあるのだから、真実に違いありません。きっとそうです。

実際に、仕込み前にお腹いっぱいにしては、調理に障ります。もういいやってなります。なので、厨房に入る前は、お腹いっぱいにはしないはずです。

あまりお腹いっぱいにしないようにして、そのまま仕込み、開店、片づけ、となると、いつご飯食べるんだよ、という話です。

なので、プロの調理人たちはおそらく、空腹時でも血糖値があまり下がらない、丈夫な体を持っているのだと思います。あ、僕はだめでした。お腹がすいてふらふらしていました。

③おいしいものを意識的に食べるようになる

職業として料理をしていると、料理は食べるものでなく作るもの、となりがちです。

それは、食べる側の感覚を失うことで、良くありません。だから、おいしいものを意識的に食べるようにしているはずです。

それに、毎日、同じような料理を作り続けていると、あれ?おいしい料理ってどんなんだっけ?と不安になることがあります。そういうときは、あせって、お気に入りのお店に飛びこむのです。ああ、そうだ、おいしい料理って、こういうものだ、となります。

おそらくプロの料理人たちは、そういう避難場所のような店をキープしているはずです。それをまとめたら、面白い本になりそうな気がします。意外と、ちかくにある中華屋だったりする気もしますが、それはそれで面白いです。たんなる美食の本には、ならなさそうですね。

それと、インド料理業界では、休暇を取ってインドに行くことが珍しくありません。

これもおそらくその類だと思います。もうやってられない!客として楽しみたい!という気持ちを発散させる意味合いもありそうです。本格的なインド料理を食べられる場所は、日本では限られていますものね。あとは、単純に、インプットをしにいくのかもしれません。作家たるもの本読むべし、というのと似てますね。

 

以上、ほかにもありそうですが、3つを挙げました。

味の濃いものは食べない、おなかいっぱいは食べない、そして食べるときは何かに駆り立てられるようにして店に飛び込むなんて、因果な職業だと思います。実際に料理はしていなくても、飲食業に一度携わった人は、ついつい店に入れば席数を数え、従業員の数を数え、営業時間と日数をチェックして、冷蔵庫の大きさを気にするようになります。外食は楽しいけど、楽しくなくなります。

おそらくこれは料理に限ったことでなく、漫画家は一読者としては漫画を楽しめなくなるし、デパートの店員さんはウィンドウショッピングを楽しめなくなるし、按摩師は、按摩を楽しめなくなりそうです。そんなもんですよね。

ふと思ったのですが、働いているときは、機械の部品みたいなものを売っていたので、とくに日常生活が変化することはありませんでした。そういう意味では、メーカーはお勧めです。とくに一般消費者向けじゃない会社です。トヨタに入ったら車を楽しめなくなりそうです。

履歴書の志望動機欄にはこう書きましょう。「貴社の製品については何も知らず、興味もないため、消費者としての自分の楽しみをなんら阻害しないため」。

そうですね。僕なら採用しませんね。

 

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コメント

  1. カナさん より:

    相変わらず冴えていますね。
    毎回楽しみにしています。
    お若い店員Bさんはご存知ないでしょうが、食べ物屋さんの店主がお気に入りの店を紹介していくという番組がありました。
    「味な店」というテレ東の札幌版のかなりしけた番組でしたね。
    結局近所の店の持ち回りという美味しくもない店ばかりでしたが。

    1. 南インド屋 より:

      あの番組は、そういう趣向だったのですね。知りませんでした。
      味な本、という題名で出版すれば、一応は僕の考えていた本になりますね。はい、全然違いますね。

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