何か料理を始めたい時にはインド料理が良いかもしれない

初っ端からタイトルを反故にして申し訳ないのだけど、人を招いて何かを作る、そういう目的で料理を習得するなら、フランス料理が良いと思う。フランス料理とはいっても凝ったもの、いわゆるフレンチではなく、もっと家庭的なもの。いい感じのサラダと、肉を焼くか煮込むかしたものを用意できればそれで良い。デザートは自分で作れたら最高で、技術がないなら(僕はない)お客様に持ってきて貰えば良いし、何なら季節のフルーツを出しても良い。神が作りたもうたフルーツは大抵のケーキを凌駕する。現代のフルーツはめちゃくちゃ人の手が入っているから実質ケーキなのだけど。スープを出したければ、玉ねぎや芋と一緒に季節の野菜を軽く炒めてミキサーに放り込めばそれでスープになる。この形式の良いところは、本当に技術がいらない割に見栄えがすることと、ゆっくり食事をするのに向いていること。天ぷらそばお待ち!から30秒で退店とは全く違う世界。ここはフランス、昼ごはんに3時間かける国。「パリっ子の食卓」と「父ちゃんの料理教室」を読もう。きっとフランス料理を作りたくなるはず。

菊水にあるビストロプティレジョン。素晴らしいお店

南インド屋なのでインド料理の良さを伝えよう。自分の商売のために言うのではなく、いや、そう言う気持ちも10パーセントくらいはあるけど、インド料理は、何か料理を始めたい人に心からお勧めできる。フランス料理を勧めたあとなら、心から勧められる。インド料理の良さは、自炊やホームパーティ需要に応えつつ、もう少し趣味的な要素があることだと思う。ホームパーティ向けには、ビリヤニというキラーコンテンツがあるのでそれの習得をお勧めしたい。ビリヤニさえ炊けば全ては解決する。ここで想定している、「何か料理を始めたい時」は、実際に役に立つかどうかだけでなく、趣味的な要素のある料理をやりたい時、ということなので、それならインド料理良いですよ、ということを書く。僕は商売でインド料理をやっているけど、いわゆるインド好きではないし旅行好きでもない。単純にインド料理が好きなだけだから、インド料理の良さと良くなさを併記することに抵抗がない。目が$$になっているときは欠点など言わずにインド料理を全力で勧める。今はブログ内だから普通の目でこれを書いている。俺のことを信じてくれ、インド料理は趣味としての料理に本当に向いているんだ。理由は3つある。

 

1.スパイス以外の食材が安い

2.特殊な調理器具が必要ない

3.権威が存在しないから自由にできる

 

順に見ていこう。

 

1.スパイス以外の食材が安い

フレンチの問題点は、日本では乳と肉が高いこと。生クリームとバターの価格は止まるところを知らず、肉はここ2、3年で本当に高くなってしまった。特に牛肉の値上がりはちょっと腹立たしいほどで、乳と肉がど真ん中にあるフレンチを日本で作るのは、やや高コストだと言える。フランス料理はやはり肉の料理で、薄切り肉をちょっと使うような日本家庭料理と違って、ドカンと肉を真ん中に置かないと始まらない。肉ドカンが高くつく日本でフランス料理をやると、どうしても贅沢な料理になってしまう。チーズが高いのも泣きどころで、まともなチーズを買おうと思うと、チーズ屋さんかデパートの地下に行くしかない。いくつか買うと平気で5000円くらいは行く。これもまた贅沢品になってしまう。個人的には、ジュピターやカルディーでも売っているブリーチーズを買ってきて自宅で追熟させるのが良いと思っている。あとは青かびチーズなら、そこまで高くなくとも、選択肢がある。ハーブとか葉物野菜も高くつく。日本ではキャベツと大根しか売っていなから、それ以外の野菜を使おうと思うと、贅沢品扱いになってしまう。ハーブの高さは腹立たしくなるほど。

その点、インド料理は、原価が低い。ナンとカレーの店が妙に沢山あるのは、そもそもの魅力とか低賃金労働とかもあるけれど、やはり原価を抑えやすい料理体系だからだと思う。肉ドカンよりはかなり安い。スパイスに関しては、昔ならいざ知らず、今はかなり手に入りやすくなっている。スパイスは手に入りにくい!というイメージが先行しているのか、今でもマニア以外の人と話すと「スパイスは自分で輸入しているの?」「スパイスってどこで売っているの?」というようなことを訊かれる。そういう、スパイスの有り難みによって生活させてもらっている僕としては、そのイメージを崩すのも躊躇われるけど、スパイスは、手に入りにくいものの中ではトップクラスに手に入りやすいものだと思う。ちょっと探せば必ず売っているしネットでも安定して買うことができる。値段も、激安ではないけど、高いものではない。何と言ってもスパイスは乾物であり、腐らないし(劣化はするけど)、ナチュラルチーズの輸入に比べるとコストが段違いに低いのが効いている。チーズと豆腐には旅をさせるなと言うよね。今作った。もう一つ、インド料理でよく使う豆類もやはり乾物で、これも輸送に耐える。だから手に入りやすいし安い。インディカ米も言うまでもなく乾物で、これも手に入れやすい。インド料理で使うギー、澄ましバターも、加熱処理をしてあり常温で保存できるので、バターよりは輸送しやすい。エシレのバターがものすごく高いのは、ブランディングもあるけど、そもそもバターに国境を越えさせる無理があるのだと思う。バターと豆腐には旅をさせるなと言う(言わない)。

インド料理にも手に入れにくいものはあり、コストが嵩むものもある。羊肉がそう。ジンギスカンの国旗を掲げる北海道ですら、インド料理に使いたくなるような羊肉はほぼ売っていない。薄切りしか売っていない。大前提として、インドでは鶏肉がものすごく消費されていて、鶏肉だけでも十分構成できる。それでも、やはり羊肉、マトンが鶏肉の上位に置かれるのは否定できない。インド料理では塊の肉、できれば骨付きの肉が欲しい。これは羊肉に限らず、骨付きの肉を煮込むとおいしい。救いとしては、インド料理の肉は、フランス料理ほどには品質にうるさくないこと。ハラルショップで売っている冷凍の羊肉でも、結構おいしく出来上がる。状態の良い肉がないと始まらないフランス料理に比べると、インド料理はだいぶやりやすい。もちろん、冷凍していない生の肉を使うに越したことはないし、冷凍でも結構品質に差があるから、信用できるショップを見つけることの重要性は高い。ちなみに、羊肉でなくとも、やぎ肉や牛肉でも良い。ハーブに関しては、ミントとコリアンダーリーフ(つまりパクチー)、南インドをやるならカレーリーフがあると良い。ミントとコリアンダーは、ハーブの中では比較的どこでも売っていて、値段も安い。自分で育てるのも容易らしい。カレーリーフも、暖かいところなら育つらしいし、札幌でも自宅で育てている人はいる。

インド料理に使う食材は、日本でも手に入るものが多い。札幌のように瓜をあまり食べない文化であるとちょっと厳しいのだけど、普通にスーパーで売っているものでちゃんとインド料理を拵えることはできる。そういう意味でもインド料理は優れている。

最近人に来てもらって料理を振る舞っている。楽しい

 

2.特殊な調理器具が必要ない

フランス料理はオーブンがないと少し苦しい。なくても行けなくはないけど幅が非常に狭まる。フライパンで仕上げるのには技術が必要で、目と手を離せないからホスト側がテーブルについて食べたり喋ったりできなくなる。これはいけない。もちろんインド料理でも特殊な調理器具は存在し、あった方が良いものはある。一番はミル、ミキサーで、これはもう一万円弱でマジックブレットを買ってもらうしかない。オーブンに比べると小さいし安い。おそらく皆様が気にされるのは、値段よりも置き場所の問題だと思う。実はミルがなくとも、パウダースパイス四種類とホールスパイス3つくらいがあればかなりのインド料理を作ることができる。ただ、スパイスなんて数種類あればいい!はプロの人間の感覚であり、iphoneでも映画が撮れるのは、ハイエンドの機器を使いこなせる人間だからで、最初は色々なスパイスを買って使ってみるべきだと思う。弘法筆を選ばず、は、まあ弘法なら選ばないでしょうね、としか言えない。我々は弘法ではないのだ。鍋に関しては、家にあるもので十分に対応ができる。インド鍋があったら便利とか、タルカパンがあると良いとか、言いたいことはないではないけど、これはインド料理にハマってからで十分。インド料理は、本当にスパイスさえあればすぐに始められる手軽さがあり、だからカレー屋が乱立して…やめましょうこんな話。中華料理は、中華鍋の運用が少し難しい。たいした問題ではないのだけど、頻繁に中華を作る人でないとうまく運用できない気がする。

 

3.権威が存在しないから自由にできる

フレンチや中華、和食には、権威がある。学校があって毎年大量にその道のプロが生産されている中で、素人が家庭で作るのに、チラチラとそっちを伺う気持ちが生まれるのは仕方のないことだと思う。安心して欲しい。インド料理の、プロと呼べるシェフはほとんど存在しない。大人になってから学びましたレベルではなく、ずっとその道です!目をつぶっても作れます!みたいな日本人は非常に少ない。正直言って、一人でもいるか怪しいと思っている。権威を生むためには裾野の広さが必要で、裾野を広げるには、大量生産されたプロが必要だと僕は思っている。それに比べて、日本は、マニアが自分の台所で蠢いているだけで、組織だったものは存在せず、権威は存在しない。敢えて言うなら渡辺玲さんとか水野仁輔さんになるのかな。象徴としての人間がいないだけでなく、実際のところインド料理は、おそらく中華やフレンチほどには体系化されていない。だから、ある意味で好き勝手にやっても許される業界なのだと思う。権威による萎縮は、和食が一番顕著で、なぜか我々日本人は、和食を作ろうとすると、襟を正してちゃんとしたやり方をしなければと思ってしまう。我々日本人は、もっと自由に和食を作って良いはずなのに、和食=料亭の味 みたいな思い込みからか、謎日本家庭料理にみんなが流れていってしまっている。なんでこうなったのでしょう。これは損失だと思うよ。話がそれた。インド料理には権威がないから自由にできる。安心して肉と野菜にスパイスをまぶして欲しい。権威がない、プロが少ない、というのはそのまま、希少性へと繋がる。パエリアを炊くから食べにこない?と誘うのより、ビリヤニ炊くから食べに来ない?の方がヒキが強いし、ハードルが低い。リゾット作るから食べにおいでと言うと、下手をすると本職が来てしまう可能性があるけど、ビリヤニならまずその心配はない(僕はビリヤニパーティに喜んで行くよ!誘って!)。SNSに自作のビリヤニを上げたら、何か文句をつけてくるインド料理マニアがいるかもしれないけど、その人はきっと社会的にうまくいっていない人間だから無視して良い。ああ、暇なんだな、と思おう。イタリアンだと本職が書き込んでいる可能性があるし、グルメライターの可能性もある。怖いね。もう一歩話を進めると、インド料理に詳しくなると、飲食店情報にも当然詳しくなる。詳しい人になれる。これは、自尊心をくすぐるよね。

 

あげた3つ以外にも、良いところはある。豆料理のバリエーションが豊富なこと(豆は安くてうまくて健康に良い)、インド周辺国への発展性があること(ネパール料理に興味が移る)、適度な物好き感があること、そもそもスパイスが持つ訴求力、ベジタリアン対応の容易さ、などが挙げられる。単純に、スパイスが好きならインド料理をやれば良いし、ベジタリアン的な好みなら、インド料理は最高峰の料理体系だから間違いなく楽しめる。あとは、日本国内での偏差値を上げたいのであれば、いくらでもあたらしいがジャンルが見つかるであろうインド料理は、競争相手が少ないので、自然と偏差値が上がる。僕が南インド屋の看板をあげたときは、南インドという括りで十分新しかったのが、今では陳腐化してきていて、せめてタミル、ケララ、カルナータカ、と分けた方が良いとは思う。今更タミル屋にはなれないので、恥ずかしながら今でも南インド屋と名乗っている。そう、新しいがゆえに競争相手が少ないジャンルは、急速に開拓が進み、すぐに自分も陳腐化する危険性がある。それでも進むのさ。

北区にあるワタンカフェは家庭的なインド料理が食べられる。これはカッティダルという酸味のあるダル。めっちゃうまい

 

さて、これまではインド料理の良さを書いてきた。ここからは、インド料理のダメなところを挙げ、別にインド料理でもいいんじゃない、と冷水をかけるような事を書く。インド料理のダメなところを上げるなら4つある。

 

1.スパイスを使わないといけない

2.豚肉のレシピに乏しい

3.サラダが弱い

4.油の量を減らしにくい

 

順に見ていこう。詳説するまでもなく、ああそうだよねとなるとは思う。

 

1.スパイスを使わないといけない

これはもうインド料理を真っ向から否定することになる。日本人の大多数は、カレーは好きだしスパイスも結構好きだけど、家で日常的にスパイスを使った料理をやりたいかというと、全くそんなことはないと思う。なぜかというと、スパイスを揃えないといけないのと、スパイスを使うと家の中がスパイスになるから。このコラムは、料理を始めるにおいてスパイスくらいを揃えるのはやぶさかでない、むしろ揃えたい、と思うような人に向けているとはいえ、匂いについては覚悟ができていない人が多いだろうと思う。少ない経験から言うと、たまにインド料理を作る程度であれば、家全体がスパイスで染まることはないと思うけど、一定以上に作り続ける場合は覚悟が必要であることは明記しておくのが僕の責任だろうと思う。カレー屋は匂いでわかる、雰囲気でなく物理的に、とよく言われるように、どうしても部屋そのものや服、その他全てのものに匂いがつく。僕はもうわからなくなっているけど、家に来た人は大体、「すごーい良い匂い〜!!」とおっしゃる。そうか?無臭だが?と思っても口に出さず、へへスパイス屋ですからねと僕は言う。多分服にもカバンにもついているから、スパイスの匂いが嫌いな人とは付き合えないなと思っている。実は、匂いについてはスパイスそのものより、玉ねぎとニンニクの方が残りやすい。フライドオニオンを作ると家の中が玉ねぎの匂いになる。あれ?これ、ダメじゃない?インド料理を選択する人いなくない?このコラムはお蔵入りか? いやいや、そんなことはない。僕のように仕事で毎日インド料理を作るのと、趣味として作るのとでは、堆積する匂いの量が違うと信じよう。

純日本人である店員A。スパイスを日常的に摂取するとこういう風になる可能性もある。

 

2.豚肉のレシピに乏しい

インド人は豚肉を食べない、というのは本当であり、嘘でもある。ムスリムは戒律で豚肉を口にしない。ヒンドゥー教徒は豚を不浄なものとして扱うらしく、これまた豚肉を食べないという。ただインドは広いので、豚肉食を文化として持っている地域も多々ある。ポークビンダルーは有名で、カルナータカ州山間部のcoorgで食べられるポークカレーは比較的有名。アッサム(インドと括るのに抵抗があるけど)では豚肉を食べる。隣国のネパールではヒンドゥー教徒でも豚肉を食べる。豚肉に対する忌避は、ムスリムの戒律ほど厳しいものではないのだろうなと思う。いずれにせよ、インド料理は豚肉のレパートリーに乏しい。日本で手に入りやすく、値段も手頃な豚肉を使えないのは、かなり厳しいものがある。この一点だけでも、インド料理だけを日本で作り続けるのは無理があるというか不自然だと言って良いと思う。料理はやはり土地に根ざしたものであるべき。まあ、趣味としての料理の話であって、生活を全てインドスタイルにしようという話ではないので、豚肉を食べたければそれに適した国の料理をすればいい。そして、インド料理は、そもそも肉の調理に特化した料理体系ではない。肉を使ったカレーや煮込みならおいしいものはあるし、ニハリ、コルマなど、濃厚なムスリム色を感じる料理も、肉まみれでおいしい。ただ、それらもやはり、たまに食べるとおいしい肉カレーというカテゴリーに入る。炭水化物と組み合わせる事を前提としている料理と言い換えてもいい。もっとシンプルな、肉を食べたい!という強い欲求を満たすものではない。やっぱり肉食ならヨーロピアンの方がおいしい。ステーキ!ローストチキン!という猛者と戦えるようなインド料理はほとんどないはず。これをインド料理の欠点と捉えず、家で食べるならそんなに肉肉しくなくてもいいよね、と割り切れば、何の問題もない。あと、ベンガル料理はかなり肉食度合いが強いので、日常的に肉を沢山食べたい人でも割と満足できるかもしれない。ベンガルは魚も沢山食べるしね。

かつや、おいしいよね。安いし。僕は必ず梅でなく竹にするよ

 

3.サラダが弱い

こちらの方が問題としては深刻かもしれない。インドは基本的に生野菜を摂らない文化で、サラダといえば玉ねぎ、きゅうり、にんじんを輪切りにしたようなものを指す。もちろん現代では生野菜を食べるレシピも開発されているのだとは思うけど、インド料理体系に生野菜が組み込まれていないのは事実。日本人は生野菜が好きなので、生野菜を封じられると、食卓を彩るものが減ってしまう。これに関してはもうどうしようもない。ただ、チキンカレーと、たとえばコールスロー的なものは相性が良いし、スパイスカレー的なものでも生の食材を取り入れているので、日本の食卓でインド料理と生野菜を組み合わせることはできる。肉料理の乏しさと合わせて、やはりインド料理一本でいくのは厳しいと感じる。あとデザートも弱い。肉、生野菜、デザートが弱いから、インド料理とフレンチをやるのが良いと僕は思う。

北千住のブラッスリーロノマトペ。マッシュルームのサラダ

 

4.油の量を減らしにくい

 

これも結構大きな問題で、僕も日々レシピを作りながら頭を悩ませている。インド料理は、油を減らすことが難しい。思想的にも油が非常に重要で、油を抜いたらインド料理でなくなると言って過言ではない。炒めたり焼いたりの操作に油が必要なだけでなく、味としても油が大きな役割を果たす。ヘルシーと扱われがちなベジタリアン料理でも、現地的に仕上げようと思うと、かなりの量の油を使うことになる。僕が自分のために作る時は、油をある程度減らして作っていて、お客様が来た時にはきっちり油を使う、と使い分けている。日々の自炊、ホームパーティー、レストラン、と求められる味の強さがグラデーションを描くはずで、油の使用量は大きな要素の一つだと思う。ただ、フランス料理に比べてインド料理がオイリーかというと、そんなことはない。そもそも、インド料理が悪いというよりも、日本食が、例外的にノンオイルに向いている料理体系なのだと思う。日本料理と比べたら、大体どんな料理を持ってきても油が多く感じてしまうから、趣味的に何か料理を始めたいなら、必ず普段よりは油が多い料理を選ぶことになる。

 

5.全ての家庭料理は素晴らしい

はじめに書いていない5つ目をもってこのコラムのまとめにしたい。全ての家庭料理は素晴らしい。レストラン料理の美しさとは違った美しさがある。100万人が300年かけて作り出した、経済性、味の良さ、作りやすさ、栄養価、土地との結びつき、それらを兼ね備えたものが家庭料理であるはずで、どの国の料理であろうと家庭料理は素晴らしく、特にインド料理だけが優れているわけではない。最近読んだ本「世界の発酵食をフィールドワークする」に載っていたエチオピアのデラシャという人々のように、酒を主食とする文化であれば、当然家庭料理は酒であり、さすがにそれを日本に持ってくるのは厳しいとは思うのだけど、そういう例外さえ除けば、ドイツだろうと中国だろうと、ペルーでもナイジェリアでも、何でも良い。僕はたまたまインド料理に触れて、特に家庭的な料理が最高だな、と思うようになった。僕が詳しく語ることのできるのがたまたまインド料理なのであって、今何か気になる国がある人は、その国の料理を調べて作ってみるのが一番良いと思う。そして、特に思い当たる国のない人は、試しにインド料理をやってみても良いのではないかと勧める次第でございます。長々とした文章を読んでいただきありがとうございました。インド料理の自炊、楽しいよ。