『チキンカレーを食べて、そのあと鰹節と揚げ野菜を加えてスープカレーにしてもう一度食べる会』の報告

第一回マニアック料理教室の報告です。一応レシピも兼ねています。

『チキンカレーを食べて、そのあと鰹節と揚げ野菜を加えてスープカレーにしてもう一度食べる会』と銘打った料理教室です。内容は、題名がすべてを語っています。そういう内容です。料理教室の詳細はこちらにあります

チキンは手羽もとを使用します。本来インド料理であれば皮をはいで使うのですが、味が出ますし、何より面倒なので、そのまま使います。チキンレッグを使うとよりスープカレーらしくなるのですが、それではあまりにもスープカレーに寄せすぎており、あくまでインド料理であるチキンカレーを作って、それをうにゃうにゃすることでスープカレーらしきものができあがる、という部分のおかしみが減じてしまいます。また、ふつうの開いてあるもも肉は、あまり出汁がでないのでお勧めしません。チキンレッグを買ってきて、それをぶつ切りにしてつかうのがベストだと思います。まずは中華包丁を買いましょう。

それをヨーグルトでマリネしておきます。

よくある失敗のひとつとして、マリネの時にヨーグルトは入れすぎて、ヨーグルト味のカレーになってしまうことです。ヨーグルトは火を通すとけっこうな酸味が出るのです。

●チキン手羽もと——1kg

●ヨーグルト——大さじ4

●ターメリック——小さじ1/2

●チリパウダー——小さじ1

●コリアンダーパウダー——小さじ1

●塩——小さじ2

マリネの時間は、2時間くらいでも大丈夫です。なんとなく、冷蔵庫に入れずに常温でマリネした方が早く仕上がる気もするのですが、実験はしていないので、なんとなく程度にとどめておきます。

それではチキンカレーを作っていきます。今回のチキンカレーは、玉ねぎとトマトのグレイビーで、水分は少な目なので、チキンマサラ、ともいえるようなものです。チキンマサラ、というと、あまり水分の多くない、比較的スパイシーなものを指すことが多いと思います。今回は、ブラックペッパーとクミンを効かせます。スパイスの種類は、多くなればなるほど香りが混ざってしまい、かえってスパイスが立たなくなることもあります。全部ガラムマサラ味になってしまう、ということです。

●サラダ油——1cup

●玉ねぎ——中3個(こまかめのみじん切りにする)

●青唐辛子——5本

●ニンニク——8かけ

●生姜——3cmくらい

●トマト缶——1缶

玉ねぎは細かめのみじん切りにして、ニンニクと生姜はつぶしておきます。完全にペースト状にしても良いのですが、今回はチョべックという石臼で潰しました。こちらのコラムで紹介していますが、とても良いものです。

大きめの鍋にサラダ油を熱します。かなり多いように思えるかもしれませんが、ひるんではいけません。大丈夫です。

みじん切りの玉ねぎを入れて炒めます。今回は、軽く色づくまでにします。玉ねぎの炒め方は色々で、さっと炒めるだけ、から、フライドオニオンのようにしっかりときつね色になるまで揚げるように炒める場合もあります。基本的に、強く炒めるほど玉ねぎの風味は強くなります。ノンベジのカレーの場合、しっかり炒めることが多いのですが、ここでは色づくまで、とします。焦げっぽい風味を残さないためです。また、玉ねぎを炒めるときに、塩をすこし入れると、玉ねぎの脱水が促され、炒め時間を短縮することができます。また、蓋がある鍋であれば、玉ねぎに火が通るまでは蓋をして蒸し焼きのような状態にしたほうが、時間はかかりませんし、部屋に匂いも充満しにくいです。もし焦げ付きそうになれば、油を足してください。

●塩——小さじ1

玉ねぎが色づいたら、刻んだ青唐辛子を加え、さらにニンニクと生姜も投入します。かき混ぜながら炒めて、香りが出たら、トマトを入れます。あらかじめミキサーでペースト状にしておいても良いです。今回はトマト缶を使いました。生のトマトでも良いのですが、がっちりと濃いカレーを作りたいときには、トマト缶の方が向いていることもあります。トマト缶は安くて保存性も高いので、使えるときにはつかって構わないと思います。

そのまま強火で炒め続けて、全体がなじんだら、マリネしておいたチキンを加えます。チキンの表面に火が通り白っぽくなるまで、和えるようにして炒めます。この工程、グレイビーを作ってからそこにチキンを入れて炒めるようにしてから水を入れる、というのは、果たして本当に意味があるのでしょうか。炒めるのは時間もかかるしガス台も汚れるし、炒めすぎると肉が硬くなったりもする気がします。まあ、私は保守的なので、一応お約束として炒めます。

それから水を加えます。

●水——300ml

水は、入れすぎない方が良いです。鍋の材質や形状などによっても大きく変わりますが、完全にスープ状になるようでは水が多すぎます。あとで水分を飛ばすのに時間がかかるので、様子を見ながら足してください。

水をくわえたら蓋をして、弱火で15分ほど煮込みます。マリネしてあるので、それで柔らかくなります。蓋の無い鍋の場合は水がどんどん減るので、適宜足してください。ただ、今回、売っている手羽元が、すこし大ぶりで、そのせいか15分ではいま一つ柔らかくならなかったので、そのあたりはチキンと相談してください。

その間にクミンライスを作ってみましょう。実に簡単です。

●バスマティライス——1cup(30分ほど水に浸けておく)

●サラダ油——大さじ1

●クミン——小さじ1

●塩——小さじ1/2

●水——2cup

鍋にサラダ油を熱して、クミンを入れます。クミンが色づいたら、水を切ったバスマティライスを入れます。クミンがどれくらい色づくまで加熱するかは、お好みです。浅めにしても良いし、きっちり色づくと、ナッツのような香ばしい風味になり、それもおいしいです。

米を入れて、そこでかき混ぜたくなるのですが、米は崩れやすいので、すぐに水と塩も加えます。鍋をゆするようにして鍋の中身を均一にします。火は強火です。蓋をして、吹きこぼれそうになったらふたをとります。軽く鍋をゆすりながら強火で水分を飛ばし続け、液面が米より下になったらふたをして弱火にします。10分間加熱して、蒸らしておきます。

こうしている間にチキンに火が通っているはずです。蓋を開けて、塩とパウダースパイスを加えます。

●塩——大さじ1

●チリパウダー——小さじ1/2

●クミン——大さじ1(ブラックペッパーと一緒に粉末にする)

●ブラックペッパー——大さじ1

スパイスの挽き方ですが、完全な粉末にするより、すこしだけ粗さが残るくらいのほうが良いです。

塩とパウダースパイスが水を吸います。当たり前ですが粉末を加えるととろみが出ます。3分ほどかき混ぜながら炒めます。もしこの時にシャバシャバであれば、しばらく強火で水分を飛ばします。出来上がりは、グレイビーがぽてっとするくらいを目指します。味見をして、足りなければ塩を足します。時間がたち温度が下がると、チキンがかなり水を吸うので、ちょっと緩いかな、くらいで火を止めても大丈夫です。ノンベジのカレーにおけるコツとしては、味を凝縮することだと思います。玉ねぎを炒めるときには、しっかり炒めて水分を飛ばし、水を足しすぎず、塩を強めにします。シャバシャバにすると、どうしても味がうすくなり、かつ肉の水分が抜けてぱさぱさになりやすくなります。出汁が出てしまうんですね。なので、できるだけ味を、ぎゅっと濃くするよう、気をつけます。

かなりシンプルな作りですが、これでちゃんとしたチキンカレーになります。食べるときは、熱々でなく、ちょっと冷めたくらいの方が味がわかってよいかと思います。

それではここからがスープカレーの部です。

先ほど申し上げました、ノンベジのカレーのコツ、というのは、ここでは一旦忘れてください。まずは水を足します。ジャブジャブにします。そして、10分ほど煮ます。もちろん出汁をとるためです。その間に、スープカレーとはなんぞや、ということを適当にまとめます。

水——1500ml

たぶんアジャンタ、というお店が最初ではないかと思うのですが、ああいう、スープ状のカレーのことをスープカレーと呼ぶのだと思います。出始めのころのスープカレーというと、ふつうのインドカレーに水とチキンスープを足したような味で、あっさりしているイメージです。利点としては、スープ状にすることで、よりスパイスがはっきり感じられるようになること、それと、温かくて冬でもおいしいこと、だと思います。なぜスープ状にした方がスパイスが立つかというと、とろみのあるコーンスープにガラムマサラを一振りするより、コンソメスープに一振りした方が、スパイスが立つのと同じことだと思います。

とにかく、スープカレーは、普通のカレーよりも水分が多いです。水分が多いということは当然、味が薄くなります。ノンベジのカレーの基本は、味を凝縮することなのですが、完全にその逆です。では、どうするかというと、ちがうものでうまみを補います。それがスープカレーの発想です。スープ状にすると薄まって味が足りなくなるから、うまみ、甘み、油、を足して、味を調えるのです。

ここで疑問が湧くかもしれません。なぜ、他のものを足すのか。玉ねぎ、トマト、チキン、を増量すればうまみは補えるのではないか、と。その通りです。ただ、それらは、原価が高く手間がかかるのです。玉ねぎ自体は安いですが、切って炒めて、となると意外と大変で、時間もかかります。そして、家庭科の時間に習った記憶があるのですが、うまみは重ねると相乗効果で強くなるのです。安く手軽に効果が出るなら、使わない手はありません。

今回は、このようにして旨みを補います。

●ココナッツミルク缶——1缶

●鰹節粉——小さじ2

●砂糖——大さじ3

●塩——大さじ1

●レモン汁——大さじ1

ココナッツミルクは、甘みのある油ですので、かなりの塩味を受け止められます。強力なかさまし要員です。粉末のココナッツミルクを使っても良いです。さらに安く上がります。

砂糖にはうまみはありませんが、似たような働きをします。ここでは砂糖大さじ3ですが、これはまだ控えめな方です。揚げ野菜の入っている店では、けっこうな甘みをつけるところが多いです。以前、白石にあるスープカレー屋に連れられて行ったところ、驚きました。口に含んで最初にくる味は、塩でもスパイスでもチキンでもなく、圧倒的な甘みなのです。おかずではなくお菓子に近い気がします。そして、繁盛店でした。スープカレーに限らず、飲食店の料理、いわゆるお店の味は、砂糖が大きな役割を果たします。甘くして、そのぶん塩を強くすると、印象に残る味になるのです。

そして鰹節です。すべての店が鰹節をつかっているわけではありませんが、うまみを補う素材として、こんなに良いものはありません。いわゆるダブルスープです。強力です。強力すぎるので、少しずつ入れないと大変なことになります。鰹節粉はどこでも売っているかと思いきやイオンには無かったので、厚削りの鰹節を粉砕しました。また、今回は使いませんが、当然うま味調味料も有効です。

ここに、スパイスを足します。チリパウダー以外はミキサーなどで、すこし粗さが残るくらいの粉末にします。

●チリパウダー——大さじ1.5

●カルダモン・クローブ・クミン・ブラックペッパー・コリアンダー——大さじ1ずつ

●フェンネル——小さじ2

●フェネグリーク——小さじ2

●シナモン——ひとかけら

●スターアニス——1/2個

え?こんなに入れて良いの?というくらいに入れます。皿の底がジャリジャリするくらい入れます。とにかく多品種を、大量に、です。そうやって苦いくらいにたくさん入れると、薬膳風味が出てくるのです。チリパウダーは、適当に調整してください。塩、油、うまみ、甘み、すべてが強いので、かなり辛くしないと、店で食べて「お、辛いな」とはなりません。そうです。恐ろしい世界なのです。それは次の日お腹が痛くなるわけです。

スパイスを入れると、良い色になります。この濁った色合い、見たことがありませんか。これがスープカレーです。もちろんすべての店がそうなのではありませんので悪しからず。一部の揚げ野菜系の店です。

後は味見をしながら、バランスを取ります。具として揚げ野菜がごろごろ入るので、かなり濃くしても大丈夫です。それでは、具材の話に入ります。

ここまでの話から、どのような具材が合うか、と考えます。端的に言うと、根菜類だと思います。甘みを持ち、かつでんぷん質が多いのです。野菜ではありますが、主食みたいなものです。じゃが芋、人参、ごぼう、レンコン、大根、ビーツ、などです。他にも、油を良く吸うものも合います。茄子、キノコ、などです。豆腐や厚揚げなども、豆の味が強いので、良いと思います。ちょっと箸休め的にもなります。人参は、圧力鍋で煮ると、お店のあの柔らかい感じになります。皮をむかないで使うと地場野菜つかってます感が出ます。じゃが芋も皮のまま揚げましょう。

角煮を載せたりゆで卵を載せたりしても良いですね。

それと大切なのは飾りつけです。水菜は、安くていつでも手に入って便利です。本当ならパクチーの方が良いのですが、値段当たりの量は、10倍くらいの開きがあると思います。糸唐辛子や揚げた春雨、ごぼうチップスなどで飾ります。立体的にした方がそれっぽいです。器は大きめの方が良いです。うまく盛り付けられなくても、最後に水菜を入れると、それでちゃんとスープカレーになります。

と、このように、インド料理であるチキンカレーを作り、それに水をじゃばっと足して、旨みと塩とスパイスを足して、スープカレーになりました。