カフェラテが急に飲みたくなってたまらないときの応急処置 ~自宅編~

コーヒーは、飲まないでいると、飲めなくなる。水じゃさみしいし、お湯じゃ盛り上がらない、何か味のついたものが飲みたいと思ったとき、頭の中をざっとめぐって、コーヒーが選ばれなくなる。ほうじ茶にしとくか、となる。そうして飲まないでいると、ますます飲めなくなる。だってコーヒーは、 黒くて苦くて香りが強い。渋みもある。つまり刺激が強い。たまに飲むと、舌にも鼻にもがつんときて、官能的なおいしさだと思うけど、よくこんなの毎日飲んでたなあとも思う。麻痺するのか。酒もか。多分たばこもかな。くせになる、ということ。

コーヒーが苦いのが当たり前で、だからミルクを入れるのは理にかなっている気もする。当たり前ですね、すみません。そして当たり前に、ミルクはおいしい。バターもおいしい。世界中のおいしいものを集めたら、半分以上に乳脂肪分が入っていそうな気がする。そして、 カフェオレやカフェラテ、ウィンナーコーヒーは、 コーヒーを丸めたい、という意図だけではなく、 もっとミルク自体を楽しみたい情熱があって、つまり積極的なミルク登用だと思う。喫茶店の偽物ミルクは、コーヒーを丸められばそれでいいんでしょう? という消極的な登用で、カフェラテのそれとは違う。僕は、植物性の油膜がコーヒーに浮くあのかんじが、あんまり好きではない。ガソリンスタンドの洗車コーナーから歩道に水が流れてきていて、油膜が七色にぎらぎらしているのを連想する。言いすぎか。ごめんスジャータさん。

何の話かと言うと、コーヒーと牛乳の話で、ふわっとしたミルクっておいしいよね、ということ。カフェラテのあのミルク部分、あれは、人間の脳を直撃すると思う。二郎も直撃する。お好み焼きはおいしいけど、直撃ではない。なんだろう。詳しくはわからない。牛乳と言うだけで基本的においしいのに(熱心な乳脂肪分信奉者)、それが、ふわっとして、しかも下にはコーヒーと混ざったミルクまで入っている。極めつけは、ちょうどよくあたたかいこと。おいしいに決まっている。カフェラテは卑怯だ。おいしいのは当たり前じゃないか。一度飲むと、また飲みたいな、と癖になる。中毒性がある。「あのふわっとしてあったかくて、ミルクコーヒーであの、あったかいのが飲みたい」という知能指数が下がった感じの欲求が湧いてくる。今思ったけど、もしかしてタピオカミルクティーもそれなのか。

一時、チャイを出すカフェをやりたい!!と本格的に考えたことがある。札幌で。だから、札幌でチャイを出しているところを飲み歩いた。ついでにカフェラテも飲み歩いた。わかったことは、おいしいカフェラテは少ないということ。なんだよ、なんでもおいしいんじゃないのかよ、と言われそうだけど、落ち着いてコーヒーを飲んで目を覚ましてみると、なかなかカフェラテは難しいことがわかる。コーヒーの香りがよくて、ミルクのふわっと感が適当で、苦みと乳脂肪分のバランスも良くて、温度も丁度良くて、となると、なかなか無い。そしてどうやらカフェラテは、そもそもミルクっぽいものが多いらしく、正直言って、ちょっと僕にはミルクっぽ過ぎる。ベルリンのどこだかにある、「the 流行の最先端」みたいなカフェでは、ちゃんと苦みのあるあっさり系のカフェラテを出すらしく、多分好みだろうなあと思う。けっこうな数のカフェラテを飲んで、チャイも飲んで、すっかりカフェ経営に絶望して、やめになった。その前に東京に行ってサードウェーブのコーヒーなるものを飲み歩いたけど、焦がした新聞紙みたいなコーヒーとか、鉛筆をお湯で浸して舐めたみたいな味がするコーヒーとか、そういうのを浴びせられて、ほうほうの態で札幌に逃げ帰った。滞在中、人生初レベルのひどい口内炎ができたし、コーヒーの飲みすぎでずっと体がしびれるかんじがして、夜も眠れなかった。東京は恐ろしい場所だ。チャイに関しては、品川のサルマティッカビリヤニのがおいしかった。でも、それはインド料理屋であって、カフェとして出しているのでは、アフタヌーンティーのが良かった。チェーン店。某チャイを売りにしているカフェも、不思議と不味かった。なんでだろう。どうやってるんだあれは。とにかく、カフェでチャイってのは難しいらしい。カフェラテも難しいけど、チャイも難しい。

そうして、一時浴びるほど飲んだカフェラテも、飲まなくなった。それからしばらくして、新札幌にあるタリーズに入った。フラットホワイトというものがある。知らなかったけど、カフェラテよりも苦めらしい。飲んでみたら、おいしかった。原価の問題で、牛乳部分がちょっともにゃもにゃっとしていたけど、総体として、おいしかった。さすがプロの仕事。こういう、原価と折り合いをつけつつおいしいバランスを見つける、というのは、テクニックだと思う。スタバのチャイが意外と飲める味なのも同じ。さすがです。久しぶりにそういうものを飲んで、ミルクふわっとしたコーヒー欲求が再燃した。だから家で作ってみた。ほんとうなら、200万円くらいしそうなエスプレッソマシーンが欲しい。続けて何杯でも抽出できて、30席以上のカフェにも対応できる立派なのが欲しい。それ以下ならいらない、という思い切りで、ミルクフォーマーも買わなかった。あれは絶対に使わなくなる系のおもちゃだと思う。だから泡だて器でガシャガシャやってみた。あれ?意外といけるぞ?というのが感想。ちゃんと滑らかな泡になるし、小鍋で温めながらやれば、温度の管理もしやすい。これで問題ないな、ということで、ミルク部分は解決。次にコーヒーの検討。

エスプレッソは、要は、超濃いコーヒーだろう、ということで。ベトナムコーヒーのあれを使った。ぽたぽた落ちるやつ。濃く出る。でも圧倒的に遅い。やってられない。濃くできれば何でもよかろう、ということで、細かめに挽いた豆を、少量のお湯を沸かした小鍋にざっと入れ、蓋をして蒸らした。それを茶こしで濾す。とろみがでそうなくらい濃いコーヒーになる。意外と香りも良い。コーヒー豆を入れる前に火を止めることだと思う。気をつけたい人は、温度を90℃くらいまで下げても良いかもしれない。とにかくこれで濃いコーヒーができた。さっきのミルクと合わせれば、あら簡単、フラットホワイトっぽいものが出来上がり。

ここから、バランスを探るのが、けっこう大変だった。試行錯誤の途中で、お店っぽい味にする方法も見つけた。ミルクに、砂糖をちょっぴり加える。そうすると、泡が硬くなって崩れにくくなるし、「牛乳の甘味おいしい!」という印象操作も可能になる。それと、全乳粉を加える手もある。脱脂粉乳でなく、脱脂していない粉乳。これはチャイにも使えるテクニックなのだけど、こういうものを牛乳に加えると、簡単に、濃度120%牛乳を作ることができる。味が濃くて、そして、微妙に偽物っぽい風味がして、それがお店っぽさを生み出す。なんとなく、カフェっぽい風味になる。牛乳の泡立て具合と温度もいろいろ。たしかに、温度を上げすぎず70℃くらいで止めておくと、風味が残る気がする。甘みが引き立つ温度らしい。個人的な好みとしては、牛乳の生っぽい風味は、気持ち悪さと表裏なので、チャイ宜しく、がっちり一度沸かしてしまったほうが好き。泡立て方は、あんまりしつこくがしゃがしゃやると、メレンゲのようになってしまっておいしくないし、弱いと、泡がとけてしまう。まあ、良い塩梅でお願いします。

二杯分で、だいたいこんなかんじ。

①水150mlに、コーヒー豆26gを入れて蓋をして90秒ほど蒸らし、濃いコーヒーを作る。茶こしで濾して、カップふたつについでおく。粉末が底にたまるので、それをカップに注がないようにする。

②別の鍋で、牛乳400mlを温める。泡だて器でガシャガシャとやる。好きな温度まであたためたら、コーヒーの入ったカップに注ぐ。あわあわ部分を等分しないと喧嘩のたねになる。ひとくちめにコーヒーの味がするよう、カップのふちにそって、丸くコーヒーの輪ができているように注ぐとよいと思う。

この作り方では、牛乳濃いめ、苦み強め、でバランスが取れている。もっと違う位置でバランスをとっても良いと思う。水を増やしてさらっと系もおいしい。

ふわっとしたミルクとコーヒーを飲みたくなったときにどうぞ。