素人に毛が生えた程度の南インド屋が教える、素人に毛を生やす方法

南インド屋の調理担当である店員Bは、素人に毛が生えた程度です。

それでも、どうやったらおいしいミールスを作れますか?という質問を受けることがあります。

「コストをかける」こと、だと思います。

以上、本稿終わり、ではあんまりなので、もう少し続けます。今回は、料理指南、といった一般論になりそうですので、がちがちのインド料理好きの方には物足りないかもしれません。

とくに修行らしい修行をせずに厨房に立っている南インド屋店員Bが、お客様からお金を頂戴するものを作ることができているのは、その一点によります。広い意味での、コストです。決して、特殊な修行の成果ではありません

本稿の結論は、このようになります。

「包丁まな板鍋食器にコストをかけ、材料にコストをかけ、手間をかけることと練習する、二つの意味での時間のコストをかければ、たぶん素人に毛が生えます。」

それでは、これをねっちりと語っていきます。どうかお付き合いください。章立てはこのようになっています。

1.道具にお金をかけること

1-1なまくら包丁をつかうくらいなら手でちぎった方がまし

1-2まな板は、せめてまっすぐになるものを

1-3鍋は鉄かステンレス製をつかいます

1-4インドの食器を使えば、すぐにプロになれます

2.材料にお金をかけること

2-1野菜は普通のもので良い

2-2レシピ通りに作ること

3.時間をかけること

4.料理上手と下手とを分けるもの

1.道具にお金をかけること

おいしい南インド料理、作りたいですよね。どうせなら、「えー、お店やりなよー。絶対食べに行くよー」と言われるような、素人離れしたものが作りたいですよね。あるもので作るよ、と言って、妙にまとまりのある、素人離れしたものが作りたいですよね。褒められるのは、大好きです。

それでは、どうすれば人に褒められる料理を作れるかというと、何より、見た目です。料理において、プロっぽさの演出をしたければ、味よりなにより、見た目が大切です。悲しいことではありますが、「わあ、きれい」という見た目にしておけば、味が少々悪くても、最初の良い印象が覆ることは少ないのでしょう。ちなみに、ミクニサッポロの料理は、とても、とてもきれいでしたが、泡っぽくて腹の足しにならんなあ、というのが感想です。

では、見た目をよくするためには、どうすればよいかというと、一番は、材料の切り方(中国語でいう刀工)です。次に、食器です。知り合いの面白いおじさんは、「器が九割だ」と宣っていますが、それでは元も子もないので、まずは、切り方です。

ミールスはほとんど、野菜を切って炒めたり煮たりするだけの料理なので、野菜の切り方が大切です。野菜さえしっかり綺麗に切ることが出来ればそれだけで、見目良い料理が出来上がり、褒められ、舞い上がり、出店する、という流れになります。

そして、野菜を綺麗に切るためには、包丁とまな板が必須で、鍋はというと、味を大きく左右します。

この章では、包丁、まな板、鍋、食器の重要性と、どんなものを買えばよいのか、ということを述べていきます

1-1 なまくら包丁を使うくらいなら手でちぎったほうがまし

というのは大袈裟ですが、本当に大切です。

とくにミールスにおいては、下記の二点が大切です。

①野菜の大きさを揃えること

②野菜を小さく切ること

②に関しては、例外もありますが、大体はそうです。小さく切ると、プロっぽくて、インドっぽいです。

まずは、キャベツのポリヤルを例に挙げます。いくつか写真を載せますので、どれがプロっぽいか、見てみてください。

https://www.youtube.com/watch?v=dP7xZ0Em3uc

https://www.youtube.com/watch?v=_7UvbpvJQFs

http://www.spicytreats.net/2011/02/cabbage-poriyal.html

http://blogexplore.com/food/sabzi-veg-dry-curries/cabbage-carrot-fry-muttaikose-carrot-poriyal/

いかがでしょうか。上の二つがプロっぽく見えたと思います。

次に、アヴィアルという、野菜のココナッツ和えを例に挙げます。レシピもあります。

https://www.youtube.com/watch?v=ILvWtnt1Cfs

南インド屋

http://spicycookery.com/avail-vegetables-with-crushed-coconut/

https://www.mareenasrecipecollections.com/avial-mixed-vegetables-with-ground-recipe

こちらも上の二つが良く見えたのではないでしょうか。アヴィアルの一枚目は、あまり小さく切っていませんが、しっかりと大きさが揃っています。1枚目と3枚目では、1枚目が良いでしょう。

これで、野菜の切り方の重要性を納得して頂けたかと思います。世間に公表しようとしている人ですら、意外とちゃんと刀工が出来ていないのですね。南インド屋も、切るのは遅いのですが。

さあ、包丁を買いましょう!今すぐ買いましょう!

と言っても、なかなか買ってくれないのは知っています。なので、動画を用意しました。家にあった切れない包丁と100円ショップで買った薄いまな板とで、人参を切ってみました。そのあとに、普段使いのもので切りました。

断面は、このように違います。一枚目がだめ包丁で、二枚目が良い包丁です。

だめな包丁

良い包丁

いかがでしょうか、すこしは購買意欲がそそられたのではないでしょうか。それにしても切れない包丁って、本当に危ないですね。2回ほど、手を切りそうになりました。本当に危険です。

画像だとわかりやすいですが、断面が全然違いますね。これくらい違うと、見た目もさることながら、味にも影響してきます。だめな包丁で切ると、もそもそした、野暮ったい味になりがちです。

そして、もうひとつ大きな違いは、人参一本にかかった時間です。動画は編集しているのでわかりにくいですが、良い包丁では1分未満、だめな包丁では3分以上かかりました。三倍くらいの差ですね。これは、大きな差です。

包丁の銘柄については難しいことは言いませんが、5000円くらいのステンレスの包丁が良いかと思います。鋼が好きな方はそれでも良いですが、ただ、セラミックはおすすめしません。あまりに軽く、切れ味が悪く、もろいからです。南瓜を切ろうものなら、あっという間に壊れそうです。

そして包丁を使う上で何より大事なのは、ちゃんと研ぐことです。研がない高級包丁より、研いである1000円の包丁です。これは間違いありません。研ぎ方については、「包丁 研ぎ方」で検索してください。中砥石と仕上げ用砥石、二つがあると、綺麗に研げて楽しいのでお勧めです。

ここで既に挫折しそうな方、なんとか、人に褒めらえるのを動機づけにして、頑張ってください。みんながやらないことをやれば、それだけで偏差値は上がります。

1-2 まな板は、せめてまっすぐになるものを

小さくてペラペラのまな板や、べこべこのまな板を使うとなぜ良くないか、理由を挙げます。

  1. 野菜が滑って安定しない。安定しないと、刃が入りにくい。
  2. 刃がまな板に接し時に滑ると、一定のリズムで切り続けるのが難しい
  3. 小さいと、まな板からぽろぽろこぼれる
  4. 薄いまな板は刃のあたりが硬く、包丁が傷みやすい

だめなまな板というのは、プラスチック製のペラペラしたものや、小さいもの、または滑りやすいものです。こういうものです。

 

特に三枚目の物は、縁があって便利!との声もありますが、刃を入れるときの邪魔になるので、使っていると非常にいらいらします。類似品で、折りたためて、そのまま鍋の中に材料を滑り込ませるのに便利!という商品もありますが、同じ理由で使いにくいです。まな板は、広く、平板であるべきです

また、ちょこっと切るのに便利、というのも一理ありますが、そんなにレモンやミニトマトを切る機会はあるのだろうかと考えると、しっかりしたものを一つ買った方が、場所も取らず、お金もかからず良いです。そして、レモンやミニトマトを切るにも、滑らなくて大きいまな板を使った方が、早く綺麗に切ることができます。

台所の便利グッズというのは、おたま置きしかり、十徳ナイフ状の計量スプーンしかり、芋の皮をむけるゴム手袋しかり、どうしてこうも余計なお世話のものが多いのでしょうか。便利なものは、不便なんですね。

ここはぜひ、こういうゴム製のまな板を買ってください。3000円くらいです。amazonへのリンクですので、ここから誰かが買うと、僕の通帳に10円くらい入るようです。気になる場合は、別ウィンドウから検索して買ってください。 もっと安い樹脂製の物もあります。1300円です。まあまあです。

以上がまな板についてです。続いて、鍋の話に移ります。鍋は、包丁以上に好みがわかれるところですので、慎重に話を進めていきます。

1-3 鍋は鉄かステンレス製を使います

鍋については、ステンレス鍋をお勧めします。よくよく考えると、大型の鍋を導入する店舗以外では、ステンレス一択かと思うのですが、筆者自身、あまりたくさんの鍋を使ったことはないので、大きい声では言いません。ステンレス鍋をいくつかと、中華鍋と鉄のフライパンを持つのが一番だとは思います。深いホーローも、ひとつあると便利かもしれません。

参考サイトに、色々と鍋の材質について書いてありますので、カレー作りにはどんな鍋が良いか、検討してみてください。言うまでもなく、レモンやトマトやオイルにスパイス、鍋を痛めるものだらけなので、腐食に強い鍋である必要があります。ポークビンダルーをアルミ鍋で作ったらどうなるのでしょうね。

参考サイトhttps://g-ks.com/usage/

さて、ここで強く言っておきたいのは、テフロン加工の鍋は今すぐ窓から放って捨てましょう、ということです。テフロン鍋を使っているうちは素人料理の域を出ないと、ここでは断言してしまいます。セラミックはテフロンよりは良いものの、やはり用途は限定的です。どちらも、パスタやソテーなんかにはよいのだと思います。なぜテフロンの鍋が良くないか、理由を挙げていきます。

①蓄熱性が低い

空焚きができないというのは、非常に大きいです。もともとアルミは蓄熱性が低いのも相まって、材料を投入した時に、大きく温度が下がりいちいち調理に時間がかかります。鉄やステンレスであれば、予熱した鍋に野菜を放り込めば、火を消しても、ある程度火が通ります。同じ理由で、テフロン鍋は、鍋の中での火の通り方にムラができやすいです。煮込み料理をするのであれば、そもそもテフロン加工の鍋をつかう意味がありません。

南インド屋でいうと、オムレツの場合、熱した鍋で、短時間で火を通すことでふわっとなるので、テフロン鍋では、おいしくできません。

②水分が飛びにくい

野菜炒めが水っぽくなりやすいのは、このせいです。肉を焼く時にも、水っぽい出来になります。また、インド料理では、玉ねぎを炒めて、トマトを炒めて、そこに具材を投入する、というのが定番ですが、この時にテフロン加工の鍋だと、玉ねぎの水分が飛ばず、トマトの水分も飛ばず、なんだかうすぼんやりとした味になります

③耐久性が低い

安物買いの銭失いということで、ここはひとつ。

以上三つの理由で、テフロン加工の鍋は駄目なのです。これで、包丁、まな板、鍋と揃いましたので、最後に、食器について触れます。

1-4 インドの食器を使えば、すぐにプロになれます

まずはこちらの写真をご覧ください。南インド屋黎明期の頃の写真です。素人に毛が生えていない頃ですね。

三枚とも、ひどい出来だとは思うのですが、比較すると、三枚目のほうが、良く見えませんか?

一枚目は、よくわからない定食屋、二枚目は、冴えないカフェですね。これが食器の力です。そして、この三枚ともが、包丁、まな板、鍋、すべて良くないものを使って調理していて、食器だけまともなのです。

つまるところ、プロっぽくしたければインド食器を買いましょう、という話になります。食器や調理器具なら「アジアハンター」が一番良いです。ウェットグラインダーが欲しい!というマニアックな要求にも応えてくれる、かもしれません。

http://www.asiahunter.com/

以上、長々と道具にコストをかける必要性について語ってきましたが、ここまでが準備編です。さあこの道具を手にしてどこに行こう、というのがここからの話です。原材料にかけるコストの話に移ります。

2.材料にお金をかけること

この章では、原材料について、二つの論点を述べていきます。ひとつは、まともな野菜を使おう、そしてふたつめは、レシピ通りに作ろう、ということです。レシピ通りに作ることと、原材料のコストは話が違うのではないか、と思われるかもしれません。大丈夫です。ちゃんと話はつながります。

それでは、まずは野菜についてです。

2-1 野菜は普通のもので良い

オーガニックだったり、減農薬であったり、地産地消であったりと、こだわりは色々あるかと思いますが、南インド屋の考えでは、そこまでのこだわりは必要ありません。普通のもので良いです。ただ、あまり安くて投げ売り状態のものを使うと、だれがどう作っても、不味いものが出来上がります。そこはきちっと、コストをかけて材料を選ぶことが、素人離れしたものを作るのに必要です。

野菜の選び方は、このあたりのサイトを参考にしてください。難しいことはありません。

http://choicel.com/food/vegetable/

http://www.kewpie.co.jp/yasai/erabu/index.html

二つ、付け足します。

①カリフラワーは、高いものがおいしい

カリフラワーは残念ながら、味が値段に比例します。ただ、大ぶりでしっかりした物は、一個当たりの値段は高くても、グラム当たりでみると、変わらないことが多いので、安いからといって小さいものを買うのはお勧めしません。おいしくないです。他にも、キャベツ、かぼちゃ、トマト、サツマイモなどは、しっかりとした大きいものの方が味は安定していますし、グラムあたりは安くつくこともあります。

②オクラは、どうしようもないことがある

時によって(時期ではありません)硬くて食べられないものしか出回らないことがあります。二日後には良いものが出ていることもあるので、単純な旬の問題ではありません。国産外国産にこだわらず、そのとき良いものを選んでください。もしくは、いっそ冷凍ものです。

ここはあっさり終わらせて、次に移ります。

2-2 レシピ通りに作ること

なぜおいしいものができないか、プロっぽいものができないか、理由は様々ですが、大きな要因として、レシピ通りにつくらないことが挙げられます。では、なぜレシピ通りに作れないかというと、ここでは理由を二つあげます。そもそもレシピをよく読まない、ずぼらな店員Aのような失敗例は除きます。

①あ、この材料ないから、無しで作ろう

②あ、この材料余ってるから全部入れちゃおう

これは、同じものを何日も作り続けるプロであれば起こりにくいことですが、家庭では、往々にしてあります。トマト缶は開けたから使い切ろう、ヨーグルトも使い切ろう、というのは、コストをかけないでつくろうとすれば、当然の誘惑です。でも、駄目なんです。きっちりそろえて、余っても良いから、規定量を使いましょう。

例を挙げます。南インド屋のビリヤニです。どのようなミスが起きやすいでしょうか。

●玉ねぎ——1/4個(フライドオニオン用)

いきなり来ました、玉ねぎ1/4個です。これをまる一個使ってしまうと、玉ねぎの味が強い、田舎くさい味になります。

 

●グリーンカルダモン——小さじ1/2●ブラウンカルダモン——1粒●クローブ——小さじ1/2●ブラックペッパー——小さじ1/2●クミン——小さじ1/2●シナモン——2cm(厚いカシアの場合、ほんのひとかけで十分です)●スターアニス——1粒●ナツメグorメース——小さじ1/4(スパイスミックス用)

これはまさに、「あ、この材料ないから、無しで作ろう」ですね。素人離れしたビリヤニが作りたい方は、頑張って揃えてください。

●1のフライドオニオン●青唐辛子——2本●ニンニク——4かけ●生姜——2cm●ヨーグルト——1/2cup●塩——小さじ1.5●レモン汁——小さじ1●ケウラウォーター——小さじ1

ラム肉のマリネ用ペーストです。まずは、生姜2cmが半端で、ついもっと入れたくなりますね。そして、ヨーグルト1/2cup、これをヨーグルトひとパックを使い切ってしまうとどうなるかというと、米がべちゃべちゃになります。ビリヤニは水分調整が大切なのです。ケウラウォーターは、ないなら無いで、なんとかなりますが、インドっぽさが減じます。

●2のスパイスミックス ●ギー——大さじ1●ターメリック——小さじ1/4●コリアンダーパウダー——小さじ1●チリパウダー——小さじ1/2●ラム肉—–500g(できれば骨付き)

ここは、ギーですね。ギーは、とても良い香りなので、ぜひ使いたいです。バターでは、やはりちょっと違うのです。

●水—1.5L●バスマティライス—3cup●塩—大さじ1●カルダモン—5粒●クローブ—5粒●シナモン——5cmを6本●ベイリーフ——3枚●サラダ油——大さじ1

「バスマティライスが無いから、ジャスミンライスで」というレシピを公開している方がいますが、それはもう、別物です。お願いですから、バスマティライスを使ってください。


ビリヤニを例にとって、起こりうるミスを挙げました。家にないから無しで作ろう、残すのが勿体ない、という方針で作ると、おそらくは、「全体的にべちゃっとして、香りが薄く、塩味もうすい」ビリヤニが出来上がります。これはもう、プロの作ではありません。

以上、材料そのもののコストと、それをレシピ通りに使おうとする際の運用のコスト、この二点を述べてきました。道具を揃えて、材料も揃った、となると、次は、調理の場面に移ります。この場面では、きちっと手間をかけること、そして、何度か練習すること、という、時間のコストについて述べていきます。

3.時間をかけること

これまで述べてきたことを簡単にまとめます。

プロっぽいものを作りたいのであれば、何より料理の見た目に気を付けるべき、との観点から、野菜を綺麗に切るための、包丁とまな板が必要、ということを述べました。そして、味に大きく影響する鍋は、蓄熱性や耐腐食性などの観点から、ステンレス製と鉄製が望ましい、と主張しました。最後に、出来上がった料理を盛り付ける食器は、アジアハンターでインドのものを買うと、急にプロっぽくなることを示しました。

そして、次の章では、材料である野菜の選び方を、そして、レシピ通りにつくることが大切であることを、ありがちなミスを指摘しながら示しました。

と、ここまでやって、あとは、時間についてです。非常に当たり前のことなので、簡単に終わらせます。

丁寧に切って、丁寧にかき混ぜて、丁寧に味をつけて、丁寧に盛り付けるのには、時間がかかります。そういう意味での時間が一点で、もうひとつは、練習するための時間です。いくらレシピ通りにやっても、良い材料を揃えても、気候や環境で、やはりうまくいかないことはありますし、不注意によるミスもあるので、繰り返し練習すれば、必ず上達します。

そのような時間と手間、つまりコストを料理につぎ込むことができれば、間違いなく、素人離れしたものが出来上がります。

以上です。それでは、文頭に述べた本稿のまとめを再掲し、結びとします。

「包丁まな板鍋食器にコストをかけ、材料にコストをかけ、手間をかけることと練習する、二つの意味での時間のコストをかければ、たぶん素人に毛が生えます。」

 

 

 

 

……え?まだ足りないですか?

だって、たぶん、としか言いようがないのです。生える人もいれば、生えない人もいる、としか言えません。あとはセンスの問題です。

……わかりました。本稿が片手落ちであることを認めます。それでは、生える人と生えない人、つまり、料理のうまい人と下手な人の差はどこにあるのか、という普遍的な疑問への、南インド屋なりの回答を最後の章で示し、本稿の結びとしたいと思います。センスの一言で片づけたくない人は、最後までお付き合いください。興味のない人は、ここまでで十分です。

4.料理上手と下手とを分けるもの

料理はイメージ勝負です。料理のうまい下手の分水嶺はここです。

料理とは、おいしいものを頭の中で思い描き、それを、具現化することなのです。

つまり、必要な技能は、①イメージを作る②それを具現化する、の二つがあり、これまで書いてきたことをは、②の具現化のための条件だったのです。

ストレスなく、正確に、イメージを具現化させるためには、切れない包丁や滑るまな板はもってのほかですし、テフロンの鍋も論外です。こういうカリフラワーの味が欲しい、と思っても、しなびて黒くなったカリフラワーでは、イメージとの乖離が甚だしくなります。②はある意味、そういうノイズを除去するための条件とも言えます。

また、切るのに時間と集中力がとられると、一番神経を使う、火入れや調味の段階で、頭が働かずに正確なものができません。店員Bも、集中力が長続きしない方なので、下ごしらえは店員両名で、時間をかけずに済ませて、大事な部分に注力していました。

いわゆる調理技術、うまく切ったり炒めたり、というのは、イメージを具現化させるための技術です。はじめは神経が通わずにうまく動かない手先も、何度もやっていれば、イメージ通りに動くようになり、頭と手先、そしてその延長としての料理が、綺麗につながるようになると、料理がうまい人になるのです。もちろん、イメージが出来ているのが前提ですが。

そして、その技術ですが、料理の本質ではないと考えています。なぜなら、誰だって時間をかければ、ある程度には習熟するからです。差が出るのは、イメージの部分です。プロの中でも、そこで差がつきます。

だから、料理はイメージ勝負なのです。

では、いかにしてイメージを固めるか、その方法をここでは述べていきます。以下の方法があります。

  1. 画像検索や、intagramなどで、写真を見る
  2. ネット上のレシピを丹念に読む
  3. youtubeなどで動画を見る
  4. レシピ本を取り寄せて読む
  5. 日本のレストランで食べる
  6. インドに行って食べる
  7. 人と食べ物談義をする
  8. ブローカーに頼んでインドのホテルに修行に行く
  9. 日本の調理学校や料理教室に行く
  10. おいしいものをたくさん食べる

 

順番に見ていきます。やっている人にとっては当たり前ですが、いざ説明するとなると長くなります。折角なので最後までお付き合いください。

1.google画像検索やinstagramなどで、写真を見る

「cabbage poriyal」で検索すると、画像がたくさん出てきます。instagramも、たくさん画像があります。「ポリヤル」と日本語で検索するのも面白いです。そうして出てきた画像をたくさん見ることで、大体どんな料理かの想像がつきます。インド旅行記の写真も、とても参考になります。

既に述べたように、見た目はとても大事です。

色々なポリヤルがあります、黄色かったり白かったり、キャベツの切り方は様々で、スパイスの量や種類も違います。ココナッツの入り方も人それぞれです。その中で、おいしそうなものを、できれば複数個、取り上げてください。それらをよくよく見比べることで、「おいしそうなポリヤルとはどんなものか」というイメージが出来てきます。

2.ネット上のレシピを丹念に読む

大体の画像がレシピサイトの画像ですので、クリックすれば、レシピが出てきます。取り上げていくつかの画像のレシピを、丹念に読んでください。見た目だけではわからなかった差異が、レシピにするとわかります。玉ねぎの分量や、青唐辛子の多寡、コリアンダーパウダーやヒングを使うかどうかは、画像からはわかりにくいです。塩の加減も、レシピでないとわかりません。

おすすめの方法としては、できるだけ普通のレシピを探すことです。いかにおいしそうでも、コリアンダーシードを使ったポリヤルは一般的でないですし、青唐辛子とニンニクと生姜をたくさん入れたポリヤルも、一般的ではありません。それはきっと、作者のオリジナル要素が強く出ているレシピで、そういうものは、おすすめしません。いくつもレシピを読み比べれば、「普通のレシピ」というのが見えてきます。

画像とレシピをたくさん見ると、「どれもいまひとつだなあ」と感じることが多々出てきます。そういうときは、画像Aの切り方と、画像Bの色味と、レシピCの塩加減とスパイス、これらを統合して、自分好みのレシピを作ります。これが出来れば、頭の中で、おいしいポリヤルのイメージができていることになります。

3.youtubeなどで動画を見る

有名なのがvahcheffですが、正直に言って、あまり参考になりません。なぜなら、動画は画像や文章に比べて、見るのに時間がかかり、いちいち一時停止をして静止画を精査するのも、時間がかかります。それなら、大量の画像と文章を処理した方が情報量は多くなり、イメージの精度は上がりやすいです。

それでも、全体の流れをつかんだり、カレーの粘度などを知るには、動画のほうがわかりやすいです。あとは、ストリートフードの動画は、レシピになっていることが少ないので、とても貴重です。

4.レシピ本を取り寄せて読む

作り方を調べるのではなく、イメージを固めるために本を買います。最初に本を通読して、どんな料理が存在するかを知るのにも役立ちます。ネット上の情報は散逸しているので、まとまっている本は、それだけでもお金を払う価値があります。

また、キャベツのポリヤルなら一般的なのでネットでも十分ですが、例えば、エビのピックルやハリームを作りたい!となると、ネット上の情報は少ないので、本のほうが良い場合もあります。

また、良いレシピ本であれば、本一冊すべてが、その作者の好みに染まっているので、その人の「おいしい料理のイメージ」が体系的に表現されています。これは、とても参考になります。一人の人間の好みが、いろんな料理で表現されているので、受け取る側としては、イメージを作るときの参考になります。

もし好きなレシピが見つかれば、その人のレシピを色々と真似すればよいのです。ただ、駄目なレシピ本は、とことんだめです。そういうものは捨てましょう。

5.日本のレストランで食べる

ここまでイメージを固める作業をしてきていれば、実際にレストランで食べれば、「ああ、おいしかった」で終わることはありません。自分とは違う好みの人が作った「おいしいキャベツのポリヤル」を食べれば、自分とのイメージの違いがはっきりわかりますし、自分のイメージを修正したり補強したりする機会です。せっかくお金を払っているのだから、味わい尽くしましょう。プロのイメージを盗みましょう。もちろん、そこの料理が気に入れば、自分でコピーしても良いです。まったく同じにはならない筈なので、「なぜ違うのか」を検討する良い機会になります。

6.インドに行って食べる

5の贅沢版です。そりゃあインドに行けば、ありとあらゆる「おいしいキャベツのポリヤル」のイメージが転がっているはずです。日本とは全く違う材料と環境とで作られたおいしさは、おそらくあなたのイメージを豊かにすることでしょう。日本では食べられない料理もたくさんあるので、それらのイメージを固めるには、インド行きは有効だと思います。せめて、ひと月は滞在して旅の高揚が収まったころに、精査をしたいものですね。

7.人と食べ物談義をする

個人的には、人と話すより、レシピや画像と話す方が好きなのですが、人との話がためになることもあります。

料理を作った人の話を聞くことが出来れば、どんなイメージで作ったのかがわかりやすく、また、その人の他の料理の好みも知ることが出来れば、自分のイメージ構築に役立つこと請け合いです。

いわゆるグルメ談義が、おいしい料理を作ることに寄与するかは疑わしいですが、もし詳しい人にお店の情報を聞くなら、その店のどの料理が、どのようにおいしくて、他店とはどう違ってどうおいしいのかまで聞きましょう。答えられなければ、その人は、詳しい人ではありません。

8.ブローカーに頼んでインドのホテルに修行に行く

行ったことがないのでわかりませんが、たぶん役に立つんじゃないですか。

9.日本の調理学校や料理教室に行く

行ったことがないのでわかりませんが、テクニックを得るには良いと思います。イメージを作れるようになるには、どうなのでしょう。せん切りをいくら練習しても、おいしい料理は作れない気もしますが、せん切りが重要であること自体は、事実だと思います。

10.おいしものをたくさん食べる

これはインド料理に限らず、好きなものを、おいしく食べることで、なんだか脳の中がハッピーになって、アイディアが出やすくなる気もします。イメージを固める孤独な作業の合間に、「あの鴨肉おいしかったなあ」と思い出すことで、励みになるのです。また、インド料理の枠組みの外にあるおいしさを知ることで、インド料理のイメージに寄与します。麻婆豆腐のおいしさを理解することは、きっとチキンチェティナッドのイメージを膨らませるのに役立ちます。

以上、イメージを作るための10個の方策を挙げました。

これらをこなして、イメージができたなら、あとは実際に料理を作ってみて、それとのイメージの差を埋めたり、イメージの方を修正したりして、自分のイメージと、それを具現化する技術、どちらも磨いていきます。あとは、日によって異なる材料の質を見極め、気温や天気を見て微調整ができれば、間違いなくプロの味が出来上がります。

ああ、長い文章でした。こんなことをするなら、店に食べに行った方が良いですね。元も子もないですが。

ということで、好きな店があったら、足しげく通って、末永く営業を続けられるよう、応援してください。最後までお付き合いいただき、有難うございました。

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