料理教室の振り返りと価格について

まずは価格について。これからも続けられるよう、価格を上げさせてください。

東京開催は現行4500円(税込)ですが、5800円(税込)にします。これからも物価上昇は止まらないと思うので、ちゃんと上げることにしました。どうやらこれでも相場よりはかなり安いようです。上げる理由については、単純に物価上昇のせいです。景気の悪い話になってしまうので、詳細は割愛します。

物価上昇以外に一点だけ述べますと、ビリヤニ以外の教室もやりたいというのがあります。ビリヤニは華がある料理で、やはり集客力があります。僕のように無名の人間でもちゃんと満席になっているのは、ビリヤニという形式の強さに依るところ大きいです。先人たちが浸透させてきてやっと華開いた、このビリヤニ人気に乗っかっているのですね。ビリヤニだけやっていれば、満席になることを見込んでギリギリの価格設定でも良いのですが、本当はビリヤニ以外もやりたいのです。ビリヤニの名前がつかないと、集客力は落ちます。だから満席でなくとも赤字にならない設定にする必要があります。まあ、ビリヤニ以外で満席にできない僕の力不足でございまして、頑張りますと大きい声で叫ぶしかありません。頑張ります。

これでも安いのではないかと言われる気もします。内容量や時間を考えると、たぶん相場としては8000円スタート、プレミアが乗れば一万円だと思います。そもそもこれまで、なぜちょっと安い価格でやっていたかというと、一応の理由があります。この料理教室を、料理教室好きの人だけの場にしたくなかったからです。だって、普通料理教室に1万円は払わなくない?そういうものだと慣れている人以外には手が届かないよその価格は。

日本において料理教室は、趣味やお稽古ごと、言ってしまえば、時間とお金がある人の、学びと称した遊びとして消費されるのが最も多いパターンだと思います。言葉遊びのようになりますが、料理教室は、「料理教室が好きな人」の集まりになりやすいです。僕は、そういう料理教室が好きな人だけでなく、普段は料理教室に参加しないような、食べるのが好きで、理屈とか仕組もちゃんと知りたいような人にも来てほしいと願っています。そう、この文章を平気で読めるようなあなたです。その狙いは今のところ成功していたと思います。妙に開放的で、質問があちこちから飛んでくる、良い会になっているなあと感じていました。さらに言えば、出てくるものの質と量を考えれば、普通に飲食店で食べるよりも安いので、教室としての興味はないけど、食べてみたいという興味だけで来る人もいたと思います。そういう、ある種のゆるさがあると、場がよくなると思っています。体験会に近いと時々述べていたのはそういうことです。お勉強の場にしたくなかったのです。肩肘はってお勉強に来るのではなく、なんとなく調理を眺めながら、「はあこんなもんなんだなあ」と感じ、食べて楽しむ、そういうお客様が多ければいいなあと思っていたのです。もちろん、提供するサービスがどのように消費されるかまで僕が気にするのは傲慢というものだとも理解しています。自営業だから傲慢でいいのです。

というようなことを考えていましたが、これからの価格設定は、賃金がちゃんと上がっていかないと、やや僕の狙いから外れてしまいそうな気もします。社会がんばれ。開催頻度は少し下げる予定です。空いた時間で、スパイスレッスンやビリヤニレッスンの動画や配信をやりたいと思っています。スパイスレッスンを買った人は動画も見られる、みたいな感じですね。

価格については以上です。ここからは、先日の教室の網羅的ではない振り返りです。

配ったレシピがこれです。ビリヤニの時は分量が書いてありますが、品数が増えてくると分量が消失します。書くスペースがないとか、そもそも僕がグラム単位でレシピを作っていないとか、そういう理由です。料理は雰囲気です。そして当日になってメニューが変わりました。chicken chukkaをやめて、冬瓜のコールコロンブにしました。良い魚がなかったのでチキン65にしました。

 

マトンタンニコランブのマサラ

さすがにこれは割合くらいは書くべきでした。イメージとしてはこんな感じ。体積比です。

コリアンダー 25

フェンネル 4

クミン 3

ブラックペッパー 3

ホールチリ 4 (ホールチリの体積は難しいけど)

シナモンクローブカルダモンはちょっと

米 2

 

ほぼコリアンダーですね。コリアンダーをベースにして、フェンネルとブラックペッパーを両サイドに、安定のためにクミンも配する。シナモンクローブカルダモンは、肉料理だから少し入れておこうね。生米は省略してもよく、とろみづけと雰囲気のため。この配合はいかにもタミル的。

これを、今回は軽く茶色くなるまで乾煎りして焙煎風味を乗せ、カレー的にしました。水分を抜く程度の焙煎でも良く、もっとあっさりとします。ただ、大量のスパイスを料理に投入する時には、できるだけスパイスの味は殺しておいた方が良いです。マトンタンニコランブもその類の料理で、ちょっと入れすぎくらいのスパイスを使います。

 

肉を洗う、よく洗う

 

今回はボンレスマトンブロック3kgと、骨付きヤギ肉2kgを合わせて使った。羊と山羊を混ぜるのは多分普通はやらない。今回は、肉を煮て、肉の七割くらいを引き上げて、マトンワルワルにした。煮汁と残った肉とで、マトンタンニコランブという粘度低めのしゃば系カレーにする。大量のマトンを調理するときの原型が見えて楽しいね。マトンワルワルはある程度可食部が多い方が嬉しいから、ボンレスも合わせて使った。フレッチャーというオーストラリアの会社のマトンは、なんだか良い気がする。水は何度くらいで洗いますか?と聞かれて、そう言えば何度だろうかと思った。多分、人肌くらい、35度前後の水を通すと、良い感じに臭みが抜ける気がする。表面が白っぽくなるくらいですね。ガンガン洗うと、煮たときに灰汁が出ず、匂いもそんなにしない。

 

冬瓜のモールコランブ

冬瓜が売っていたので急遽作った。最初ホワイトボードに、kumbalanga mor kuzhambuと書いてから、悩んでしまった。何か違うような。正しくはpoosanikai mor kuzhambuで、kumbalangaだとマラヤラム(ケララの言葉)になってしまう。さらに言えば、bellai poosanikaiでしたね。レシピは下記。

 

冬瓜、青唐辛子、カレーリーフ、ターメリックちょっとで煮る

柔らかくなったら、ココナッツペースト(ココナッツ、ニンニク、クミン)とヨーグルトを入れてちょっと煮る

ホールチリ、マスタードシード、フェヌグリークをテンパリング

 

テンパリングを忘れていたことに今気がついた。ココナッツペーストは、ニンニクを省略した。他に味の強いおかずが多いからね。こうやって全体のバランスを取ろうとするのは割と日本人的感覚で、もっと好きに作った方が現地感が出る気はする。

 

肉をゴンゴン煮る

これは楽しかったね。大量の肉を大鍋で煮るのは楽しいからみんなやった方がいい。液面の上のあたりに焦げ付きができているのが見えるでしょうか。このこびりついているのをこそげて、スープに溶かし込んでいた。多分、これをやるとおいしくなる。チャイも似たようなことが起こるね。肉は結局2時間くらい煮ていただろうか。コロンブには玉ねぎは使わず、エシャロットだけで作った。こういうことをするから原価が高くなる。でも、エシャロットを使うと、なんだかわからないけど味の迫力が出るんだよね。

 

原価の味、マッシュルーム

さすがにこれは僕も悩んだ。やり過ぎだろうかと。画像だと分かりにくいけど、かなりの量のマッシュルームを使った。マッシュルームは北海道から空輸した。以前東京で十勝(北海道の一地方)のマッシュルームが売られていたから、いっそ空輸した方が安心だなと。マッシュルームは売られていないことも多いし、あっても量が足りない可能性が高い。結局、ハナマサに茨城産の、鮮度の良いマッシュルームがあったから、それも混ぜて使った。生のマッシュルームは、うまいね。本当においしい。問題は原価が高いことで、炒めると、ペチャッとなってしまって悲しい。

 

ニンニク生姜を潰して使ったマトンワルワル

ニンニクと生姜はペーストにせず、すりこぎで潰して粗さの残るペーストにした。皆様ありがとうございます。かなり面倒な作業で、人間がたくさんいる国のやり方だなと思う。すりおろさないことで、見た目としても味としても勢いが出る。実は大抵のインド料理は、ペーストにするよりも、潰して使う方がおいしくなる。マトンはゴンゴン煮ているから、かなり味が抜けている。引き上げた肉に、多めの玉ねぎ、トマト、ニンニク生姜をまとわせて、味を補う構造。これによって、うまい汁と、うまい炒め物が出来上がって効率的。マトンワルワルはもっと黒っぽく仕上げることも多いけど、こういうタイプもある。タミルノンベジは、気をつけないと、どれもブラックペッパーをフェンネルを効かせたものになりがち。これはカルパシも少し使った。

 

すごい味だったタンニコランブ

ここまで大鍋で本格的にやったことはなくて、自分でもおいしさに驚いた。タンニコランブはシャバっとしたコランブのことで、単体で作ると、肉をそこまで多くしないレシピが多い。だからとろみを他の食材で補う。今回は、ワルワルにも使う分の肉を投下しているから、単体では実現しないうまさになっている。大量のパウダースパイスとエシャロットが溶け込み、ラーメンスープを思わせるような、ガツンとうまい汁になった。冷めてきたらちょっと粘度が高くなったから、本当はもうちょっと水を入れても良かったかもしれない。今回の白眉は間違いなくこのコランブ。うますぎませんか?と参加者に言われた。僕もそう思う。この、黄色赤茶色の滑らかなグレイビーの感じは、いかにもタミルのノンベジ食堂といった風情。札幌でもやりたいな。

 

オムレツとラッサムもついた

9時から11時は自由参加の下拵えで、その間に僕がこっそりラッサムを作っていた。ブラックペッパー、クミン、カレーリーフ、皮ごとニンニク、ホールチリを粗さの残るペーストにする。油で炒めて、トマトちょっととパクチーの根の方、タマリンドと煮る。カレーリーフをペーストにすることで、緑がかったような色になり、現地感が出る。塩と酸味を強くしすぎないのがポイント。ちょっと辛かったかな。一番辛かったのがラッサムだと言われた。多分ブラックペッパーが多かったのだと思う。オムレツは、非インド的な仕上げ方。卵に関してはインドのものはそんなにおいしくないと思っていて、これは、一旦ふわっとさせてから、ヘラで押し付けて薄くしている。皆様が食べ始めてから焼いた。完全におかずが過剰ですね。画像はないのだけど、米がちょっと柔らかくなった。僕のイメージよりもパーボイルドの弱いもので、それを掴みきれていなかった。生米の状態で「ちょっとパーボイルドが弱いタイプですね〜匂いが薄くて〜」とヘラヘラ喋っていたくせに。まあ、柔らかいのはそれはそれでおいしい。

 

書こうと思えばいくらでも書けるのだけど、これくらいで。次の予定は立っておらず、多分11月に東京で、その前に札幌で、大阪はちょっとどうしよかな、という感じです。札幌の価格は据え置きか、上げても少しかなあと思っています。